「カルピス」に宿る4つの物語
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大正8年、七夕の日(7月7日)に発売が開始された、甘ずっぱくて優しい飲み物-「カルピス」。
「初恋の味」として知られるこの乳酸菌飲料には、実は「カルピス」の生みの親、三島海雲の命を救った発酵乳との出会いから始まる、深い物語があります。今回は、100年以上愛され続ける「カルピス」に込められた思いや背景を、4つのトリビアを通じて紹介します。
INDEX
「カルピス」の生みの親 三島海雲 -「カルピス」の原点と「国利民福」の思い
「カルピス」の誕生は生みの親・三島海雲(みしまかいうん)が内モンゴルで出会った発酵乳との運命的な出会いに始まります。内モンゴル滞在中に体調を崩した海雲は、遊牧民が日常的に飲んでいた発酵乳をすすめられます。酸味のある乳製品で、それを飲んだ海雲の体調は次第に回復。その体験が、乳酸菌の力を確信させるきっかけとなりました。帰国後、独自に乳酸菌の研究を重ね、「おいしく、滋養があり、安心で、経済的」を目指して生み出されたのが、日本初の乳酸菌飲料「カルピス」でした。
海雲の人生のモットーは、「国利民福」-国の利益と民の幸福のために尽くすことで、商いを通じて人々の役に立つことを追求し続けました。
その志は、大正12年の関東大震災の際に、被災者へ「カルピス」を無償配布した行動にも表れています。また、子どもたちに楽しいひなまつりを過ごしてほしいとの願いを込めて、昭和30年に園児へ「カルピス」のプレゼントを始めました。この取り組みは、現在も続く「ひなまつりプレゼント」として、2025年で61回目を迎えました。
人を思いやる心―それが「カルピス」の原点であり、海雲のゆるぎない志なのです。
「初恋の味」 キャッチフレーズ誕生秘話
「カルピス」に「初恋の味」というキャッチフレーズがあることは知っていますか?
発売から1年ほどたった大正10年のある日、海雲の後輩である驪城卓爾(こまきたくじ)が、「カルピス」を「甘ずっぱくて忘れられない味は、まさに“初恋の味”だ。これで売り出しましょう」と提案したのが始まりです。
当時は、恋を公に語ることがはばかられる時代。海雲は子どもも飲む商品に恋の言葉はふさわしくない、初恋とは何か聞かれたらどう答えてよいか分からないと、難色を示しました。けれど驪城は、「子どもに聞かれたら“初恋の味”と『カルピス』の味だと答えればよい」と説得。その言葉に心を動かされ、キャッチコピーに採用しました。
大正11年に広告で使用が始まると、世間の反応は二分されました。大阪では警察から、「色恋沙汰の表現は控えるべき」とポスターの自粛を求められるほどでした。しかし保守的な価値観が残る一方で、自由思想やロマン主義が広まりつつあったこの時代に、「初恋の味」というキャッチフレーズは多く若者の心に響き、「カルピス」の代名詞として定着していきました。
「甘ずっぱさ」と「記憶に残る味」。これこそが「カルピス=初恋の味」と言われ続ける理由なのです。
100年以上守り続ける継ぎ足し製法
「カルピス」の味を支えるもうひとつの物語。それが乳酸菌と酵母の原液(スターター)の継ぎ足し製法です。大正8年の発売以来、途切れることなく継ぎ足され続けています。これにより、「カルピス」ならではの香りや風味が守られ、今もなお100年前と“ほぼ同じ甘ずっぱいおいしさ”を楽しむことができるのです。
100年以上にわたり、変わらぬおいしさと安心を届けるために、歴代の研究者たちは時代に合わせた微調整を重ねながらも、原点の味を守り続けてきました。「カルピス」は飲み物であると同時に、時を超えて歴史や思いをつなぐ存在なのです。
科学で証明された「カルピス」と思いやりの関係性
思いやりを感じる飲み物―「カルピス」。その思いが科学的にも証明されていることをご存じでしょうか。
慶應義塾大学との共同研究により、子どもが親のために「カルピス」を作ると、”愛情ホルモン“とも呼ばれる「オキシトシン」が多く分泌されることが明らかになりました。自分のために作る時よりも、誰かのために作る時の方が、その分泌量が高まるのです。これは「カルピス」作りが思いやりや絆を育む行為であることを科学的に示しています。
水で好みに合わせて希釈するという「カルピス」ならではの飲み方には、おいしさだけではなく、思いを込める“ひと手間”が自然と生まれる仕組みでもあります。忙しい毎日の中で、ほんの数分でも“一緒に「カルピス」を作る”ことは、子どもの記憶に“誰かを大切にする心”として残っていくかもしれません。
アサヒ飲料では、恒例のひなまつりプレゼントに加えて、カルピスの誕生日7月7日にちなんだ七夕プレゼントとして応募のあった全国の幼稚園・保育園すべてに「カルピス」をプレゼントします。乳製品を控えている子どもも一緒に楽しめるように、「豆乳生まれのカルピス」もお届けします。(今年の応募は締め切りました)
また、7月1日から、三重県のHOTEL VISONで、蛇口をひねると「カルピス」がそのまま飲める機材『カルピスじゃぐち』の実証実験を開始します。子どもから大人までみんなが笑顔になれるわくわくを届け、「カルピス」の新しい体験を創出します。
「カルピス」の生みの親である三島海雲の「国利民福」の思いは、100年を超えた今でも「カルピス」の根底に息づいています。思いやりをこめたその一杯が、親子の絆をそっと深め、世代を超えて思いをつなぐーそれがカルピスの変わらぬ原点なのです。
※「カルピス」「CALPIS」はアサヒ飲料株式会社の登録商標です。
Text 「ハレの日、アサヒ」編集部

