茶師十段に聞く!おいしい緑茶の新定番は「香り」
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プロフィール
日本最高位茶師十段 酢田 恭行(すだ やすゆき)さん
創業180年以上の宇治茶の老舗「放香堂」で、六代目東源兵衛を受け継ぐ茶師。60 年以上の歴史の中でわずかしか選ばれていない「茶審査技術十段(最高位)」に認定されています。
皆さんはどんな時に緑茶を飲みますか?ホッと一息つきたい時、食事を楽しむ時、家族と団らんする時・・・いろいろなシーンが思い浮かぶと思います。今回は茶師十段の酢田さんに、緑茶の新たな楽しみ方について聞きました。「香り」を楽しむ緑茶を、生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。
INDEX
茶師って何?どんなことをしているの?
「茶師」は、元々茶畑でお茶を作る人の総称でしたが、現在は緑茶を審査鑑定するための資格を持つ人を指します。茶葉の品質を審査鑑定し、その持ち味を最大限引き立たせるために、おいしいお茶作りに日々取り組んでいます。
茶師の資格を取得するためには、年に一度開催される「全国茶審査技術協議大会」において、一定以上の成績を修めなければなりません。審査方法は、用意されたお茶の産地・時期・品種を判別すること。段位は初段から十段まであり、最高位である十段取得者は60年以上の歴史の中でも20名ほどしか存在せず、非常に狭き門です。
複数ある審査の中で、酢田さんが最も難しいと言うのが「茶歌舞伎」です。おちょこに注がれたお茶を一口飲み、自分が思う銘柄の札を投札箱に入れます。5種類全部飲み終えたところで、投札箱を開けて答え合わせをし、その合計点で順位を競います。一度入れた札は変更することができないため、一つ間違えると二つ間違えてしまうことになるそうです。
緑茶も紅茶も元は同じ?お茶そもそも話
麦茶、ウーロン茶、ほうじ茶、お茶にはたくさんの種類があります。「お茶」とは、ツバキ科の常緑樹の葉の部分を加工し煎じたものですが、栽培方法や製造方法の違いで、それぞれ風味の違ったお茶になります。緑茶も紅茶も同じ木からをつくられますが、生葉を乾燥・発酵させるときの発酵度合いによって、さまざまな味わいになるのです。
お茶が中国から日本に伝わってきたのは、1,200年前の奈良平安時代。遣唐使によってもたらされ、眠気覚ましや病気の治療など、主に薬として用いられていました。鎌倉時代には、千利休に代表される「茶の湯」によって抹茶(濃茶)が広がり、お茶を急須で飲むようになったのは、200年ほど前の江戸時代からと言われています。
緑茶は一見どれも同じに見えますが、玉露や玉緑茶などいろいろな味があります。最近は抹茶をスイーツとして味わうなど、その楽しみ方は広がり続けています。
おいしい緑茶の新定番は「香り」?
おいしい緑茶にはどんな要素があるのでしょうか。スッキリした味わい、うまみ、渋みなど、さまざまですが、最近は「香り」を重視したいという声があります。コロナ禍で不安を感じる日常の中、香りで気分転換したいという人も増えているようです。
そのようなライフスタイルの変化に伴い、酢田さんが注目したのが「萎凋(いちょう)緑茶」です。萎凋とはしおらせること。昔は製茶する機械の能力が低かったため、加工するまでの間に茶葉がしおれ、微発酵した独特の華やかな香りをもつ萎凋緑茶が生まれていたのです。やがて技術の進歩に伴い忘れ去られていきましたが、近年お茶好きな方からの人気が高まっています。
昔からある萎凋緑茶の香りを、新しい軸として復活させたのがアサヒ飲料の新ブランド「アサヒ 颯(そう)」です。茶葉を摘み取った後に時間をかけてわずかに発酵させることで、茶葉本来の香りを引き立てました。萎凋茶葉ならではの花香が特徴です。気分に合わせて、いつもとちょっと違った緑茶を選べると楽しいですよね。忙しい毎日、ストレスと上手に付き合い、自分で自分を整える習慣を取り入れてみませんか。
「お茶は団らんの真ん中にあるもの。気軽に楽しく飲んでほしい」という想いを体現されている酢田さんは、気さくで柔らかい雰囲気の素敵な方でした。そんな酢田さん、お茶を審査鑑定するためにカレーやたばこなどの刺激物は避けているそう。嗅覚や味覚は衰えていくため、できる限り摂生しているんだそうです。