おいしく完食!心も満たす介護食の新ブランド「まんぷく日和」
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皆さんは介護食にどのようなイメージをお持ちでしょうか?「あまりおいしくなさそう」「自分にはまだ関係ないもの」という方が多いかもしれません。アサヒグループ食品は、そんな介護食のイメージから一線を画した新ブランド「まんぷく日和」を立ち上げました。要介護者においしい!食べたい!と思ってもらえるような介護食を目指した「まんぷく日和」。その開発の裏側を紹介します。
INDEX
「まんぷく日和」とは?
「まんぷく日和」は、2025年9月29日に新発売となる介護食の新ブランドです。介護を必要とされている方や、少しいつもの食事が食べづらくなってきた方でも安心して食べることができるやわらか食です。ラインアップは全37アイテム。
介護食の柔らかさの基準である※UDF区分の「容易にかめる」が2アイテム、「歯ぐきでつぶせる」が10アイテム、「舌でつぶせる」が12アイテム、「かまなくてよい」が13アイテムとなっています。
※UFD区分:ユニバーサルデザインフード (Universal Design Food)の区分のことで、「かたさ」や「粘度」による食品の食べやすさの目安となる4段階に分類。これにより、誰でも自分に合った食べやすい食品を選ぶことができます。
ブランドを刷新する決断をした背景は?
「まんぷく日和」について、開発担当者のマーケティング四部・中澤里紗、商品開発四部・青山佳乃、久須美紗織に聞きました。
―「まんぷく日和」の開発背景を教えてください。
中澤 高齢者の方や在宅介護は年々増えているのですが、それに比べて介護食市場はそこまで大きく伸長していません。私たちには、介護食をもっと気軽に使っていただき、介護する人もされる人も幸せな毎日を過ごしてもらいたい、という想いがあります。
本当はもっと必要としてくださる方がたくさんいらっしゃるのに、介護食のイメージが正しく伝わっていないため、手に取っていただけていないのではないかと考えました。実際に、介護をしている方にお話を聞くと、「栄養は摂れると思うけど、味は薄くておいしくなさそう」「ぐちゃっとしていそう」と言った声がありました。一方で、介護食を使ってくださっている方の1年以内の購入リピート率は約77%と高く満足度の高い商品であることは確かでした。
―なるほど。既存の介護食ではその価値が伝わっていないと判断したのですね?
中澤 はい。味の評価は非常に高いので、既存のブランドをリニューアルすることも考えたのですが、まずは介護食のイメージを一新することが大切だと思い、ブランドを刷新することを決断しました。
例えば、これまでのパッケージでは、機能性を伝えることに重点を置いていました。柔らかさの基準や、使用している食材、摂取できる栄養素を大きく表示するといったことです。そういった情報ももちろん重要なのですが、今回は、とにかくおいしさが伝わるパッケージに変更して、手に取ってもらうことを目指しました。メニューもこれまでにない、食べてみたくなるようなアイテムをラインアップしました。
ブランド名の「まんぷく日和」には、単に満腹になってもらいたいということだけではなく、食事をおいしいと思って完食してもらい、心も“まんぷく”になってもらいたいという想いを込めています。「日和」には特別な日ではなく、普段の食事に取り入れてもらいたいという想いがあります。
介護食なのにナポリタンやソーキそばも!?開発のこだわりとは
―どのように開発を進めたのですか?
青山 私は商品のコンセプトに基づいて、原料の選定や調理方法の確定、味づくり、安全性の確認などを行って、実際に製造・商品化する「中味開発」のメイン担当なのですが、今回、全37アイテムを一斉発売するということで、先輩と一緒に3人がかりで開発に取り組みました。5アイテムくらいを同時並行で進めるという工程を何度も繰り替えしていたので大変でしたが、試作品がどんどんおいしくなっていく過程がとても楽しかったです。
というのも、私は大学時代に栄養管理士の資格を取得し、介護食をテーマにした授業にも出ていたのですが、その時試食した介護食があまりおいしくなかったという経験がありまして……。自分が将来食べるならもっとおいしいものにしたい!という想いをもって、介護食の開発を志望し、アサヒグループ食品に入社したのです。入社4年目でこの仕事に携われてとても光栄でした。
新ブランドを任されるのは初めてでしたし、「まんぷく日和」には、これまでの介護食にはない「ナポリタン」や「チキンライス」などトマト系の斬新なメニューがラインアップされていたので、1からレシピを考えて、メニューの再現性を高めることにとても苦労しました。マーケティング部門からのオーダーは「昔ながらの喫茶店のナポリタン」だったので、喫茶店に食べに行ったり、ネットで調べたレシピを片っ端から試してみたり。10回くらい試作を繰り返した結果、ナポリタンらしさの肝はベーコンだと気づき、ベーコンの風味を際立たせるように仕上げました。ただ、この商品は「舌でつぶせる」区分なので、実際にベーコンを入れることはできません。そこで、ベーコンエキスの種類や配合を工夫しました。
―久須美さんが開発した商品を教えてください。
久須美 私が担当したものの1つは「ソーキそば」です。ソーキそばといえば、一般的に沖縄そばに豚の骨付きあばら肉を乗せたものですが、まったく同じ素材は使用できないので、ソーキそばらしい味わいに仕上げるために試行錯誤しました。この商品は「歯ぐきでつぶせる」区分の商品なので、「ナポリタン」に比べると少ししっかりとしたお肉を入れることができました。豚肉・鰹だしの風味に加え、紅しょうがのアクセントでイメージ通りの味に仕上げることができました。味の輪郭をはっきりさせるために、酵母エキスなども隠し味に加えているんですよ。レトルトの介護食としてここまで味わいを再現できたので、「ソーキそば」は私の自信作です!
今回は、たくさんのアイテムを開発したので大変でしたが、介護食はよりしっかりと味付けすることが求められるので、試作や試食が楽しかったです。本当においしく仕上がっているので、介護食のイメージが変わると思います。
―介護食といえば和風のイメージでしたが、今回様々なメニューをラインアップしているんですね。
中澤 そうなんです。実際にデイケア施設などでお話を聞いたところ「いつも魚メニューでつまらない」「おかゆばかりでは飽きてしまう」など、洋風や中華も食べたいという声が多かったのです。その日の気分によって選べるように、和食だけではなく、洋食や中華風などのメニューをバランスよく揃えました。
「パンがゆ」は、その声をヒントに開発したメニューです。「ソーキそば」や「味噌煮込みうどん」は、お出かけが難しい方にも、旅行気分を味わってもらいたいと考えたご当地メニュー。これは青山さんのアイディアですよね。
青山 いろいろなメニューがあって、長くたくさんの人に愛されるブランドになってほしい。そう思って考えたメニューです。おいしい食事で食欲が増して、幸せな気持ちになってほしい。「まんぷく日和」がそのきっかけになってくれたらとても嬉しいなと思います。
―栄養面はどうでしょうか?
久須美 はい。栄養面にもしっかりとこだわっています。お年寄りは便秘で悩まれている方も多いので、すべてのアイテムに食物繊維を配合しています。また商品によっては、不足しがちなたんぱく質も入れています。エネルギー補給に嬉しい高カロリー主食も揃えました。皆さんに安心して召し上がっていただきたいです。
おいしくごはんを完食して、心も“まんぷく”になる幸せな食事時間を!
―「まんぷく日和」をどのようなブランドにしていきたいですか?
中澤 「まんぷく日和」は、介護が必要な方の“食べたい”という気持ちに寄りそいたい、という想いから生まれたブランドです。食の幅の広がりを楽しんできた世代の方々が、食べたい食事が食べられるようにお手伝いしたい。「まんぷく日和」は“おいしさ”にこだわり続けます。介護食のイメージを変える存在になって、「今日は、まんぷく日和のナポリタンが食べたい!」といつものメニューの選択肢の1つになれるようなブランドにしたいです。
おいしいごはんで心も満たされて、食事時間がより幸せになり、皆さんが笑顔になってくださることを願っています。
text 「ハレの日、アサヒ」編集部

