若い稲を食害する“稲作の天敵”ジャンボタニシは、稲作農家の悩みとなっています。そんなジャンボタニシが水田から消えた？ 何が起こったのでしょうか？ まずは以下の動画をご覧ください。

え？水田から“稲作の天敵”ジャンボタニシが消えた？！

ご覧のように、ビールづくりで発生する「ビール酵母細胞壁」には、植物の免疫に作用し根の成長を促進する力があります。パワーアップした稲は成長に必要な土壌中の鉄分を多く吸収。一方のジャンボタニシは鉄分を嫌がるという事が知られています。ジャンボタニシは鉄分を食べてしまうとお腹を壊してしまうことから、鉄分を多く含んだ稲を食べなかったと考えられるのです。

そこで2020年、ジャンボタニシに悩まれていたJAぎふの皆さんのご協力のもと、ビールづくりの副産物「ビール酵母細胞壁」由来の肥料を使用して被害を抑える実験を行いました。その結果、なんとほとんど稲が食べられずに済んだのです！この成果を元に2021年、JAぎふの皆さんはさらに「ビール酵母細胞壁」を使用する水田を広げて稲作に取り組まれています。このように、「ビール酵母細胞壁」は、農業における深刻な問題に役立っているんです。

「ビール酵母細胞壁」が持つチカラとは？

アサヒグループでは、ビールづくりの役目を終えた副産物としてのビール酵母をさまざまな形で活用しています。その一つが「ビール酵母細胞壁」。卵に例えると殻の部分にあたります。

このメカニズムを少し解説すると、「ビール酵母」を守る壁であるこの「ビール酵母細胞壁」には食物繊維の一種であるβ-グルカンが豊富に含まれています。この成分はカビの構造と似ているため、「ビール酵母細胞壁」を植物に与えると、植物はカビに感染したと勘違いして、抗菌物質を作ります。ワクチンのような働きで植物が本来持っている免疫力を引き出すことにより丈夫な植物体を作ります。

そして次に、子孫を残そうと細かい根をたくさん張ってたくさん栄養分を吸おうとする体になります。植物自体が丈夫になると、農薬などの使用も極力抑えた農作物の栽培が可能となるのです。ビールの副産物から農作物を守る。まさにサステナビリティですね。

実は、ジャンボタニシの食害を低減すること以外にも、耕作を放棄した水田跡地でサツマイモの栽培に成功したり、弱っていたぶどうの木が回復して収量が増えるなど多くの農業現場で活躍しています。さらにはゴルフ場や野球場での芝生の育成 にもお役立ちできていることなどさまざまな効果もあるのです。それらはまた改めてお伝えしたいと思います。

入社以来「ビール酵母細胞壁」一筋のスペシャリストは農家の皆さんの喜ぶ声が励みに！

ビールづくりの副産物から、このような効果がみられることはとても意外だと思われる方が多いと思うのですが、農業従事者の皆さんから、食品由来のため安全・安心だと感じると嬉しいお声をいただいています。

北川：学生時代から植物の研究をしていたこともあり、農家の方々が困っているお声を聞いて、何か会社としてお役立ちできることはないかと考えていました。
元々、ビール酵母をエサとして家畜に食べさせていた長野県の農協の方から、“動物が元気になるんだから植物にも良いのでは？“植物用のビール酵母を作って欲しい！”という要望があり、新たな開発が始まりました。農協の方、農家の方や大学などの研究機関と一緒に実証実験をしながら開発を進めてきて、そのおかげで作物の収量増加と免疫力向上を実現するという、農業に役立つ農業資材（肥料原料）を生み出すことができました。

開発した農業資材を使っていただいた農家の方々から“こんないいモノを作ってくれてありがとう”という喜びの声をいただけることが何より励みになっています。農作物を元気にし、高い収穫量を維持できれば、農家の方々の収益を増やすことにも貢献できます。今後は国内外でより多くの人に使っていただき、人にも環境にもやさしい持続可能な環境保全型農業を目指す皆さんのお役に立ちたいと思っています。

※アサヒグループホールディングスのプレスルーム2021年7月21日の記事を再構成しています。