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 100年先へ、美術館ができること。アサヒグループ大山崎山荘美術館の出前授業

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 100年先へ、美術館ができること。アサヒグループ大山崎山荘美術館の出前授業

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アサヒグループ財団が運営するアサヒグループ大山崎山荘美術館(以下 大山崎山荘美術館)では、教育普及活動の一環として京都府大山崎町の小学校に出向き、美術をより身近に感じてもらう出前授業を行っています。今回は、その出前授業に込めた思いや、2026年に開館30周年を迎える美術館のこれからについて、教育普及担当・広報チームの池田恵子に話を聞きました。

アサヒグループ財団大山崎山荘美術館 教育普及担当・広報チーム 池田 恵子

美術館が学校へ行く理由。大山崎山荘の出前授業とは

―出前授業はいつから始まったのか教えてください

大山崎山荘美術館では、2009年頃から小学校への出前授業を行っていました。当時、日本の美術館では、30年前頃から広まり始めた※「対話型鑑賞」の考え方を背景に、展示や研究とあわせて、作品の鑑賞の多様性を、いかに多くの人と共有し、伝えるかという点が重視されるようになっていました。大山崎山荘美術館の教育普及活動も、そうした時代の流れのなかで展開されてきたものだと感じています。

新型コロナウイルス感染症の拡大により、一旦活動が休止となりましたが、そのタイミングでこれまでの取り組みを見直し、今の時代に合った形で所蔵作品を活かし、アサヒグループの社会貢献の一端を担う活動を目指し2023年にミュージアムスタートプログラム「HOP・STEP・MUSEUM!」を立ち上げました 。

※対話型鑑賞・・・対話を重ねながら美術作品を読み解いていく美術鑑賞の手法。

―なぜ小学生を対象にした出前授業を行っているのでしょうか?

当館は私立の美術館でありながら、文化庁が定める登録博物館のひとつでもあります。そのため、博物館法に基づき、「収集・保管」「調査・研究」「展示・教育普及」という三つの柱に沿った活動が求められています。こうした理念を踏まえ、私がこの美術館で何ができるかを考えたとき、「10年後を見据えた種まき」が必要だと感じました。現在、出前授業の対象としているのは10歳前後の小学生です。私自身の経験からも、この時期に受けた印象や体験は、その後の人生に長く影響を与えることがあると感じています。
だからこそ、今この時期に美術館の作品と出会い、心に残る体験をしてもらうことで、10年後に再び美術館を訪れたいと思ってもらえるような関係を築きたいと考えました。
将来、彼らが地元に戻ったときに「大山崎山荘美術館へ作品を見に行こう!」と思い出してもらえたら、とても嬉しいですね。

―2023年から始まった「HOP・STEP・MUSEUM!」はどのようなプログラムですか?

現在は、小学校3・4・5年生を対象に、年に1回、美術に触れる出前授業を行っています。
3年生では、絵画や彫刻など美術館の所蔵作品をカードにした教材を使い、大山崎山荘美術館やコレクションに親しんでもらう授業を行っています。4年生になると、美術館の建物自体が築100年を迎える歴史的建造物であることから、その歴史に焦点を当てた授業を実施しています。5年生では、当館の代表的な所蔵品のひとつであるクロード・モネの作品を題材に、作家の表現やその魅力について学びます。
学年を重ねるごとに段階的に内容を深めることで大山崎山荘美術館への興味や作品への理解が自然と育つよう工夫しています。

小学3年生の授業で使用している所蔵品のカード

―出前授業を続ける中で、大切にしている想いはありますか

美術作品の魅力のひとつは、同じ作品であっても、見るタイミングやその人の経験によって、感じ方や見え方が大きく変わるという点にあります。たとえば、10歳のときに見たモネの作品と、20歳、40歳になってから見るモネの作品では、受け取る印象も心に残るものも異なるでしょう。そうした変化こそが、美術の奥深さであり、面白さでもあります。

だからこそ、当館の近くに暮らす子どもたちには、ぜひ何度でも美術館を訪れてほしいと願っています。訪れるたびに新たな発見があり、そのたびに自分自身の変化にも気づけるようなそんな場所として、この美術館が心に残ってくれたら嬉しいです。

また、作品に触れることは、必ずしも唯一の「正解」があるものではありません。算数や国語のように明確な答えがある教科とは異なり、作品鑑賞は見る人の経験や知識、関心によって受け取り方が大きく変わるものです。
こうした多様な感じ方を認め合うことは、多様性を学ぶ貴重な機会にもなります。他の人と一緒に作品を見ることで、自分では気づかなかった視点に出会える。その体験そのものが、とても大切だと感じています。同じ作品をとおして多様な考え方やものの見かたを共有しあうこと。それが、美術を通じて育まれる豊かな学びのひとつなのではないでしょうか。作品からさまざまなことを感じ、気づいてくれると嬉しいですね。

100年前を知り、100年後を想像する

昨年3年生の時に、大山崎山荘美術館の約1,000件の所蔵作品から厳選した61点(絵画・彫刻・器など)をアートカードで学んだ子どもたちは、4年生となった今年、大山崎山荘美術館の建物の歴史を学びながら、「100年前」と「100年後」について考える授業に取り組みました。

授業はまず、大山崎山荘の歴史から始まります。約5,500坪の庭園の中に位置し、本館である大山崎山荘を含む6つの登録有形文化財から構成されています。実業家・加賀正太郎の別荘として大正から昭和にかけて建設されたもので、建築そのものも大きな魅力のひとつです。授業では、子どもたちに「いつ、だれが、どのように建てたのか」といったクイズを交えながら楽しく学びます。
次に、約100年前の山荘を描いた「大山崎山荘図会」という作品を手がかりに、今も庭園内に残る建物を探しました。子どもたちが地図とにらめっこしながら、現在の風景と照らし合わせて建物を探す姿が印象的でした。

「大山崎山荘図会」を複製・拡大したパネルを児童と鑑賞する

授業の最後には、「100年後も残したいもの」について考える時間を設けました。
大山崎山荘は、実業家・加賀正太郎の没後、所有者が何度も変わり、建物の老朽化や周囲の開発の波にさらされる中で、一時は取り壊しの危機に直面したことがありました。しかし、貴重な山荘と自然環境を守りたいという多くの声が上がり、京都府や大山崎町から、当時のアサヒビール社長・樋口廣太郎氏に相談が寄せられたことで、アサヒグループと京都府・大山崎町が協力し、保存・修復することになり、100年を経った今もなお、その姿を残しています。

このエピソードをふまえ、「100年後に残したいもの」「どうやって残したいか」「なぜ残したいか」についてワークシートに書き出し、
発表を行いました。「今がんばっているピアノを、音が出なくなっても修理して100年後に残したい」「お父さんの木工作業場が珍しいから残したい」など、それぞれが大切に思うものに気持ちを込めて語る姿が印象的でした。
授業中は、クイズや写真探しにも大盛り上がり。「未来に残したいものを大切に扱うこと」「過去や未来に伝えていくことを考えるって面白い」といった声も聞かれ、子どもたちが自分なりの視点で未来を見つめている様子が伝わってきました。

授業をした池田さんは、「子どもたちの発想は良い意味で予想を裏切り、こんな視点があるんだと考えさせられる場面が多くありました。大人の発想では出てこないことばかりで、むしろ学ばせてもらうことの方が多かったです。」
と話します。

変わらずここにあるために。次の10年を見据えて

―開館30周年に向けて、いま準備していることを教えてください。

主に3つあります。
1つ目は、館の内外でさまざまな改修工事を行いました。
展示ケースの整備やショップ、喫茶室の改装、庭園内の看板の刷新、また、本館まで続く砂利道の舗装も実施しました。
車椅子や杖を使う方をはじめ、多くのお客様に、より美術館をお楽しみいただけるように環境を整えています。

2つ目は、開館30周年記念サイトの開設です。
「訪れるたび、心がうごく」というキャッチコピーのもと、美術館の魅力や取り組みを発信する特設サイトを公開しました。
アサヒグループ大山崎山荘美術館 開館30周年記念サイト

3つ目は、記念企画展・講演会の開催です。
来年1年間を通して、開館30周年を記念した企画展と講演会を開催予定です。企画展では、1年をかけて当館のコレクションであるクロード・モネの作品を全点公開します。所蔵作品8点すべてを公開するのはじつに10年ぶりとなり、貴重な機会です。
さらに、モネ展とあわせてご覧いただける、趣向を凝らした3つの30周年記念展も予定しています。
講演会では、講演会では、美術館の新棟である「地中の宝石箱」(地中館)、「夢の箱」(山手館)を手掛けた建築家・安藤忠雄さんをはじめとした豪華ゲストの登壇も予定しています。開館30周年に向けてさまざまな取り組みをしていきますので、ぜひご来館ください。
詳しくはこちら

―これからの10年に向けて、どんな美術館でありたいですか?

美術館が全国的に広く認知される存在になることは、決して簡単なことではありません。
だからこそ、草の根的な活動を大切にしながら、訪れた方や関わってくださった方にとって、「特別な場所」であり続けたいと考えています。展覧会や、さまざまな企画を通じて、誰かにとって唯一無二の美術館になることが目標です。「ここに来ればあの作品に会える」「変わらない風景がここにある」そんな安心や心の支えを感じてもらいながら、新しい発見や感動をもち帰っていただける。そんな美術館でありたいです。

多くの人に支えられながら、大山崎山荘美術館は地域に根ざし、誰かにとっての「特別な場所」であり続けてきました。
出前授業や開館30周年の取り組みを通して、文化を未来へつないでいく力を改めて感じます。
建築や自然、そして芸術が季節とともに楽しめる大山崎山荘美術館へ、足を運んでみてはいかがでしょうか。

text 「ハレの日、アサヒ」編集部

 100年先へ、美術館ができること。アサヒグループ大山崎山荘美術館の出前授業

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建築巡りにおすすめ!アサヒグループ大山崎山荘美術館

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【美術館の楽しみ方】大山崎山荘美術館の庭園で季節の花々を愛でる!

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