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エノテカ創業者・廣瀬恭久が語る「ワインのチカラ」 Vol.1

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エノテカ創業者・廣瀬恭久が語る「ワインのチカラ」 Vol.1

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ワインは面白い!そう語るのは、独自のビジネスモデルでワイン事業を展開している「エノテカ」の創業者・廣瀬恭久。長年にわたりワインと向き合ってきた廣瀬が語るワインの魅力を全4回にわたりお伝えします。

プロフィール

廣瀬恭久(ひろせ やすひさ)

1949年兵庫県生まれ。73年に慶応義塾大学を卒業。鉄鋼系商社を経て、実家の半導体部品メーカーに入社。88年にエノテカを創業。2015年にアサヒグループ入りし、現在はエノテカ顧問。

大学時代に知ったワインの魅力

私がワインに興味を持つきっかけとなった1本は「シャトー・オー・ブリオン」というワインです。そんな高級なワインはなかなか飲めない、と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、幸運にも私には大学生の時にその機会が訪れました。これも何か「ワインのチカラ」が働いたのかもしれません。

慶応義塾大学4年生の時にアメリカに語学研修で留学した際、留学先の学校の偉い方にテニスに誘われました。当時体育会庭球部に在籍していたこともありテニスは大の得意。私が彼にテニスを教えることになったのです。

そのお礼にと食事に招かれた際に振る舞ってくれたのが「シャトー・オー・ブリオン」でした。フランスを代表するボルドーの五大シャトーの一つで、1960年ヴィンテージ。飲んだ瞬間、ガツンとやられた衝撃がありました。それまで飲んでいたワインはドイツ産の甘口白ワインくらいだったので、ワインってこんなに複雑な味わいなんだ・・・とこの時、赤ワインの魅力に初めて触れました。

当時、日本ではまだワインを日常的に飲む習慣は根付いていませんでしたが、米国ではワインを楽しむ人が増えていました。ワインの魅力を知った後、学生たちで毎週末ワインを楽しみました。チリ出身の学生がいて、いつもチリワインを持ってきてくれるのです。その時に感じたのは、ワインがある場所には皆の笑顔があるということでした。
私がワインに魅せられはじめたのは、味わいはもちろんのこと、ワインを皆で楽しむシーンが大好きだったからです。これらの経験が後のエノテカ創業に繋がっていったのだと思います。

数十年後まで楽しめる!ワインは不思議なお酒

今やエノテカは世界中からワインを買い付けて輸入していますが、創業時はフランス・ボルドーのワインを中心に取り扱うことからスタートしたため、その3年くらい前から値段や商流などビジネス面でボルドーワインを徹底的に研究しました。同時に多くのテイスティングを重ね経験を深めていきました。ですので、当時はボルドーの力強い重厚な味わいが個人的にも好みでした。時を重ねて、今はフランス・ブルゴーニュや、イタリアのブルネッロ・ディ・モンタルチーノといったフレッシュでピュアなエレガントな味わいのものが自分の趣味に合うなと思っています。

ワインは不思議なお酒で、同じ地域で作ったものが同じ味わいになるとは限りません。欧州、豪州、南米、米国、もちろん日本でも造られ世界各地に銘醸地がありますが、気候によってぶどうの品質は毎年変わりますし、同じぶどうでも土壌や造り手によって全く異なるタイプのワインに仕上がります。さらにワインは基本的に熟成させるお酒なので、瓶詰めされてからも味わいが進化します。

だからワインは面白い。ワインを飲む時には、作り手の想いや、熟成の年月を振り返り慈しむ楽しさがあります。私は人よりちょっと鼻がよく、味に敏感な方かなと思っていますので、最初に樽詰めされた状態でテイスティングをしたときの味を覚えているんですね。数年後、数十年後に同じワインを飲んでさらにおいしくなっていた時の感動はひとしおです。ワインの最大の面白さは熟成ですので、これをまだ経験していない人はもったいないと思っています。特に長期熟成させるべきワインは、飲み頃になるまでひたすら我慢・忍耐することが必要です。

私はビールも大好きで、さらに世界にはさまざまなお酒がありますが、ワインのような魅力を持ったお酒は少ないのでは、と思っています。

ワインは人と楽しむコミュニケーションツール

エノテカが創業してから30年以上がたち、日本のワイン市場も大きく変わってきました。創業当時は1人当たりの年間ワイン消費量はわずかボトル1本でしたが、21年には4本と、30年間で約4倍に拡大しました。週末のランチにグラスでスパークリングワインを飲んでいる方も見かけますし、フレンチやイタリアンはもちろん、中華や日本食のレストラン、居酒屋さんでもワインを置いてくださっています。日常の食卓で楽しまれる方も増えて、ワインが生活の一部になってきていると感じています。

一方、今でも日本の皆さんは、自分たちにはワインがわからないという意識が強いように思います。特に創業当時はワインは欧州のものであり、飲みなれていない自分たちに評価できるのだろうかと。日本人が評価して、これがおいしいから勧めるといったことはなかったように思います。
ですが、私はその考えは当初から間違っている、日本人には絶対ワインが合うと思っていました。日本食ほど繊細な料理はなかなか他にはありません。しかも日本人は季節性を重視しますので、ボジョレー・ヌーヴォーなどの早飲みワインの文化も根付いています。今や日本のワイン市場は、特に東京などは、ニューヨークやロンドンなどの世界のマーケットと同じように成熟しており、今後もっと広がっていくと思っています。

まだまだワインはハードルが高いと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、全く難しいお酒ではありません。ワインの選び方や楽しみ方は改めてお話しさせていただきたいと思いますが、私の考えはただ一つ、「おいしいか、おいしくないか」。

ワインは人と楽しむためのコミュニケーションツールですので、ワインをもっと気軽に楽しんでいただけると嬉しいです。

「ワインのチカラ」で人生を楽しみたい

最近ワインを飲んでいて特に感じるのは、おいしいワインを飲んだ時の感動や驚きを一緒に飲む人とシェアする時の幸せです。例えば、映画を観たり音楽を聴いたり、スポーツ観戦した後、その感動を皆で語り合うことは楽しいですよね。ワインも同じです。
ただ、ワインの場合は、言葉を超えて感性を分かち合えるような不思議な感覚を感じるのです。私はそれを“ワインのチカラ”とよんでいます。良い映画を観た後席から立てない時がありますよね。それと似ていて、本当においしいワインを飲んだ時、一瞬言葉を失うくらいの感動があって、一緒に飲んだ人と心が通じ合えるような感覚です。

先日、あるフランス人の醸造家と一緒にワイン飲んだのですが、その人は基本的にブルゴーニュのワインしか飲まなくて他の国のワインはあまり知らないんです。私は彼が作るワインがとても好きなので、その人にもっと新たな発見をしてもらいたかった。彼のワインの方向性と合っていると思い、私が最近注目しているイタリアワインを試してもらったのです。すると彼はとても驚いて、「ヒロセはよくわかってくれている、ありがとう」と。その後は一緒に彼のワインを飲んで大いに盛り上がりました。もっと彼のワインも応援したいと思うようになりましたね。

1988年に東京・広尾でエノテカを創業してから30年以上がたちました。私のワインへの情熱はますます高まり、ワインに対する興味はどんどん深くなっています。世界中のワイン生産者や、友人、家族、エノテカのお客さまや社員などと「ワインのチカラ」でワインのおいしさの感動を分かち合ってきたからです。

ワインの周りには微笑みや愛があり、人と人を結びつけるチカラがあります。これからも「ワインのチカラ」で人生をもっと楽しみたい、そして皆さんにも「ワインのチカラ」で人生を豊かに楽しんでいただきたいと思っています。

エノテカ創業者・廣瀬恭久が語る「ワインのチカラ」 Vol.1

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