生ビールの「生」って?そのポイントは熱処理にありました
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こんにちは!
外食するときに「とりあえず生!」と、生ビールを一杯目に注文する人は多いですよね。ところでみなさん、そんな生ビールの「生」ってどういう意味かは知っていますか?
なんとなく、お店で出てくるビール=生ビールと言うイメージがあるのではないでしょうか。では、サーバーから注がれるいわゆる樽生ビールが生ビールなのか?家で飲む缶ビールや瓶ビールは生ではないの?というと、実はそうではありません!
ということで、今回は知ればもっとビールが好きになるかもしれない、生ビールの話をお届けします!
INDEX
生ビールの定義を知るには製造工程を知ろう!
「生」の意味を知るには、ビールの製造工程がカギになります。ビールの製造工程は、大まかにいうと5つに分けることができます。
製麦
ビール造りはまず、原料を用意するところからスタート。一般的に「二条大麦」と言うビールに適した麦を発芽させて、麦芽(モルト)をつくる工程が最初にあります。麦を水に浸して発芽させる「浸麦・発芽」、乾燥させて発芽を止める「焙燥(ばいそう)」、根を取り除く「脱根」を経て、麦芽が完成します。
仕込み
麦芽を糖化させて麦汁を作り、ホップを加える工程です。ホップを加えて煮た後は、煮沸で生じた濁りの成分や、ホップのかすなどを除去して、冷却へと移ります。
ホップって?
よく聞く「ホップ」とはアサ科の雌雄異株のツル性植物で、ビール造りにおいて重要な役割を果たします。
ホップがビールに果たす重要な役割は、
ビールに独特な芳香と爽快な苦味を与えること。
麦汁の過剰なたんぱく質を沈殿・分離させ、ビールを清く澄んだものにすること。
雑菌の繁殖を抑え、ビールの腐敗を防ぐこと。
ビールの泡もちをよりよくすること。
などですが、このような作用はホップの有効成分であるルプリン(黄色い花粉のように見える樹脂の粒)の働きによるものです。
世界的にホップの生産地は緯度で35~55度の間に位置していますが、日本では東北地方など気候の冷涼な所で栽培されています。しかし、現在ビール醸造に使用するホップの多くはドイツ、チェコなど海外からの輸入ホップです。
(引用元:ビール酒造組合『ビールの豆知識』)
また、ホップを使うという仕込みの方法は、8世紀にドイツで生まれたのだとか。
発酵
麦汁にビール酵母を加えて発酵させると、酵母は糖をアルコールと炭酸に分解し、同時にビール独特の香味成分を生み出します。発酵温度や時間を調整しながら約1週間かけて発酵を進め、まだビール本来の味や香りが十分ではない「若ビール」を造ります。
熟成
熟成タンク(貯酒タンク)へ移された若ビールは0℃ぐらいの低温かつ無酸素の環境下で、数十日間熟成されます。この期間の間に、私たちが大好きなあのビールの味と香りが生まれていきます。静かな環境の中で徐々に出来上がっていくビールを想像すると、ワクワクしますね!
ろ過
ろ過された若ビールは透明な黄金色になり、ここでいよいよ私たちが慣れ親しんだビールの姿になります。そして、ここが「生」ビールという言葉の由来となるポイント!
加熱殺菌の有無で決まる「生」
かつては、ろ過技術が未発達だったため、ろ過後に酵母が残ってしまうことがありました。そのため、それ以上の発酵を防ぐためには加熱殺菌が必要でした。
しかし近年、ろ過技術の進歩により、酵母を完全に除去することが可能になり、「加熱殺菌をせずに鮮度を保ったまま味わえる”生ビール”」が主流となったというわけです。技術の進歩によって、言葉で区別する必要が出てきて生まれた言葉といえます。
そうして、ろ過されたビールは瓶、缶、樽などに詰められて市場に出荷されていきます。
缶ビールも瓶ビールも「生ビール」
日本では、普段多くの人が日常的に飲んでいるビールのほとんどが生ビールです。それは、缶ビールであっても、瓶ビールであっても同様です。
お店で「生ひとつ!」と注文すると、ビールサーバーから注がれる、いわゆる樽生ビールが出てくることが多いため、樽生ビール=生ビールと思いがちですが、実はそうではないのですね。あくまで、先ほど説明した「加熱殺菌の有無」が生ビールであるかどうかを決めるポイントなのです。
ちなみに、欧州では熱処理したビールが主流の国が多いそうです。
生ではないビール。熱処理ビールは日本でも飲める?
では、生ビールとは違って熱処理を施すビール=熱処理ビールは現代でも飲めるのか?というと、飲めます。
実はアサヒビールからも『アサヒスタウト』と言う銘柄が販売されています。こちらは、イギリスタイプの上面発酵濃色ビールで、コク・甘味があり濃厚な味わいが特長。スタウト(黒ビールの)の味わいも楽しめて、根強いファンが多いビールです。
よく聞くラガービールって?
「ラガー」と「エール」
他にも、ビールの種類を表す言葉に『ラガービール』と『エールビール』があります。
生ビールと熱処理ビールは加熱殺菌の有無の違いでしたが、「ラガー」と「エール」は発酵方法の違いからの分類です。
発酵工程で、酵母が麦汁の上部に浮き上がってくる方法を「上面発酵」、逆にタンクの底に沈んでいく方法を「下面発酵」と言います。そして上面発酵で造られるビールは「エール」、下面発酵で造られるビールを「ラガー」と呼び、日本ではラガービールが主流と言われています。
またラガービールの中にも、生ビール(非熱処理ビール)と熱処理ビールがあり、日本のビールのほとんどは「非加熱処理のラガービール」であると言えます。
深く知るほど楽しめるビールの魅力
今回は、「生ビール」の定義について調べてみました。
普段は何気なく使っている言葉の意味を知ると、「これも生ビールなのか」「熱処理ビールも飲んでみたいな」と、ビールに対する興味が高まりますね!