バイヤーに聞く、自分のために選ぶ2026年のショコラ
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今年のバレンタイン、誰かのためではなく、自分のために選ぶ一粒はどんなショコラでしょうか。忙しい毎日に、ほんの少し気分がほどける。そんなご褒美ショコラを探したくなる季節です。
今回は、百貨店で長くショコラを見続けてきたバイヤーに、2026年のおすすめを聞きました。つくり手の背景や味わいの奥行きまで知ってから選ぶ一粒は、きっといつもより特別な時間を連れてきてくれるはずです。
プロフィール
松宮 香織さん 株式会社髙島屋 MD本部 食料品部
日本橋店の和洋菓子売り場からキャリアをスタートし、店バイヤー、オンラインストアの運営サポートを経て、パリ事務所での研修も経験。
現在は洋菓子バイヤーとして、クリスマス(関東店舗)とバレンタイン(名古屋を除く全国)を担当している。
INDEX
2026年のショコラは「ストーリー」で選ぶ。バイヤーが語る、今年のトレンド3つ
バイヤー・松宮さんの話を聞くなかで、2026年のショコラに浮かび上がってきた3つのトレンド。素材や味わいに加えて、つくり手の思いや背景まで味わいたくなるものが増えています。
トレンド1:「代替カカオ・カカオレス」という新しい選択肢
異常気象や生産者不足によるカカオ豆の価格高騰を背景に、不二製油がカカオ由来原料を使わずにミルクチョコレートの味わいを再現する製品を開発しました。エンドウ豆やイナゴ豆などを原料に、ミルクチョコレートのくちどけや香りを再現しています。
この製品をもとに、髙島屋と4ブランドが半年以上かけて商品を開発。言われなければカカオレスと気づかないほどの完成度に仕上がっています。「カカオを使わない」という制約の中でパティシエが生み出す“新しいおいしさ”は、その挑戦のストーリーごと味わいたくなるショコラです。
トレンド2:「ショコラx柑橘」の進化
オレンジピールに代表されるショコラx柑橘の組み合わせは、2026年にさらに進化。オレンジをはじめとした多様な柑橘果物が使われ、形状もピール状だけでなく、肉厚カットやスライスなど食感のバリエーションが広がっています。
合わせるチョコレートも、ミルクやダークだけでなく、ホワイト、キャラメル、ピスタチオなど多彩。
柑橘の酸味と甘み、チョコレートの苦味やコクのバランスを比べながら、「自分の好み」を探す楽しさがあります。
トレンド3:「甘じょっぱい」は、やっぱり強い
「甘じょっぱい」味わいは、日本人にとってなじみ深いおいしさ。みたらし団子に代表される、甘さと塩味の絶妙なバランスは、チョコレートの世界でも健在です。岩塩など粒感のある塩を使うことで、食感にアクセントが生まれ、甘みと塩味が重なり合う“層”のある味わいに。ひと口ごとに変化を感じられる、満足度の高いショコラが増えています。
チョコレート選びは、もっと自由に
松宮さんによると、バレンタイン催事に訪れるお客様の姿も、年々変化しているようです。
特に増えているのが、「自分用」にチョコレートを選ぶ人。最近では、男性が自分のために複数ブランドを少しずつ買う姿も珍しくありません。かつて“女性のイベント”だったバレンタインは、今や誰もが楽しむものに。
試食をしながら話を聞き、納得して選ぶ人。ブランドストーリーを重視する人。素材や限定感に惹かれる人。その基準は実にさまざまです。キャラクターコラボやかわいらしい缶など、パッケージをコレクションする楽しみも広がっています。
今年の「買い」はこれ!バイヤーが選ぶ必食ショコラ5選
現地で、バイヤーとして自らがリクエストをして実現したショコラと、特に思い入れのある髙島屋限定のショコラを「5選」として選定しました。
この時期だけに、一堂に会する海外ブランドショコラはお客様からの期待も大きいもの。
今年もブランドらしさやシェフのこだわりが分かりやすく感じられるように、一粒一粒悩みながら各シェフと一緒にセレクトしたそうです。
1|ジャック・ジュナン(フランス/髙島屋限定)
一見シンプルながら、一粒の中に3層の味わいを閉じ込めた名作。この一粒にはパティシエ、ジャック・ジュナン氏のこだわりが詰まっています。マカダミアプラリネの香ばしさ、塩バターキャラメルの柔らかい甘さ、そしてチョコレートの心地よい余韻。小さな球体の中に「おいしさの層」を成立させるための技術が凝縮されています。
見た目は控えめなのに、ひと口で印象が覆る。そんな“静かな衝撃”を味わえるショコラです。
2|プラン クール(フランス/髙島屋初登場)
フランス・ノルマンディー地方の自然や家族との時間を大切にしてきたマキシム・フレデリック氏の、穏やかであたたかな世界観を映した一粒卵型ショコラは、ノルマンディー地方名産のそば茶が使われ、シェフのお姉さんの農場で採れる卵をモチーフにしており、地元と家族への敬意が込められています。
今回は日本のためだけに、バニラキャラメルとコーンプラリネを詰めたケーキ型ショコラもご用意。
シェフはLVMHグループのデザートを任される実力派でありながら温かみにあふれ、人柄がそのまま味に表れています。
※LVMHグループはルイ・ヴィトンやディオールなどを擁する、世界最大級の高級ブランドグループ。
3|グラーズ ラ・ショコラトリー(フランス/日本初上陸)
フランス西部の海辺の町・キブロンで店を営むジュリアン・グジエン氏が届けてくれたのは、「ルトゥール・ド・プラージュ」というチョコレート。フランス語で「ビーチからの帰り」という意味です。海にバカンスに来てたっぷり遊んだ帰り道に買って、ぱくぱく食べながら帰るおやつ。
そんなふうに食べてもらいたいと思って作られたのは、ヘーゼルナッツをキャラメリゼしてミルクとダークチョコレートでコーティングしたものやオランジェットなど5種。「いろいろ試したい」という日本の声を受けて実現した特別仕様のアソートです。
4|ヴァレリー・コンフェクション(アメリカ/髙島屋初登場)
ロサンゼルスを拠点とするブランドで、看板商品のトフィーは、クリームと砂糖を丁寧に煮詰めてつくるサクサクの食感が魅力です。チョコレートでコーティングし、塩と黒ゴマを合わせることで、甘さの中に香ばしさとキレのある後味が生まれます。
「甘じょっぱい」トレンドを素直に楽しめる一粒で、ヨーロッパとは異なるアメリカのチョコレートのおいしさを改めて感じさせてくれる存在です。
5|ラ・フェーヴ(ブルガリア/髙島屋初登場)
「知られざるブルガリアの食文化を伝えたい」というシェフの情熱が生んだアソート。
ブルガリアならではのヨーグルト、バクラヴァ(パイにピスタチオを挟んで焼き上げた東欧のお菓子)、ハルヴァ(穀物に砂糖を加えたお菓子)、東欧名物のヒマワリの種、ポップコーンなど、東欧の風景が浮かぶ素材をショコラに昇華させました。
鉱物のように美しい見た目は、味だけでなく“見て楽しむ”喜びまで届けてくれます。
百貨店バイヤーはどうやって「運命の一粒」を探す?
バレンタインに向けて、松宮さんはどのような視点で商品を選んでいるのでしょうか。バイヤーという仕事の、舞台裏に迫ります。
―バイヤーとして、ブランドを選ぶときに大切にしていることは?
味の良さは大前提ですが、そこにストーリー、素材の背景、限定性、見た目の新しさ、価格帯のバランスなどが加わり、総合的に判断します。規模に関係なく、個性の光るブランドを見つけ、「日本のお客様に届けたい」と思える商品を選んでいます。
―商品を選定する際、現地ではどのような活動をしていますか?
毎年5月頃に海外出張へ行き、10ブランド以上を訪問します。試食を重ねて味を確かめるのはもちろん、現地の空気、シェフの考え方、チームの雰囲気も丁寧に観察します。
甘いものを食べ続ける出張はなかなか過酷ですが、それでも、現地のストーリーをどう商品に落とし込むかを考える時間は、この仕事ならではの醍醐味です。
―出張先で、印象に残っている出来事を教えてください。
長年通っているブランドでは、「今日は特別なワインを開けよう」と料理をふるまってくれることもあります。“信頼関係が育ってきた”と実感し、心が温かくなります。
「何かをしながらではなく、チョコレートに集中して、ストーリーを読んだり、一粒に込められた想いを想像しながら味わってほしい」そう語る松宮さん。
会場には、試食を通して偶然の出会いがあります。カタログを読み込んでから訪れるもよし、その場の直感で選ぶもよし。
2026年のバレンタインは、あなた自身がときめく“一粒”を探しに出かけてみませんか。
text「ハレの日、アサヒ」編集部
写真提供 株式会社髙島屋


ショコラの背景にある物語を味わったあとは、もう一歩先の楽しみ方も。
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“どの一粒に、どんな一杯を合わせるか”——迷いがほどけるヒントが見つかるはずです。