着物デビューしたい方に!和服の始め方・楽しみ方
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年末年始のパーティや新春の歌舞伎や文楽公演などで和装の方がいると、パッと周りが華やいだ雰囲気になります。そんな晴やかな着物に憧れているけれども、敷居の高さを感じている方、今年こそ着物デビューしたいという方に向けて、結婚式や特別な機会ばかりではなく気軽に着物を楽しむためのポイントを、さが美の鈴木雪世さんに聞きました。
プロフィール
鈴木 雪世
さが美グループホールディングス株式会社 経営企画本部 広報担当チーフ
新卒でさが美に入社し、市原店や新小岩店で接客に従事。その後 葛西店に異動し、2024年1月から現職。公式Youtubeの運営をはじめ広報活動などを担当。
INDEX
TPOに合わせた着物選びで普段のお出かけに
―まずは、着物の基本から教えてください。着物はたくさん種類がありますが、どの着物がどのような場にふさわしいのでしょうか。
留め袖や訪問着、振袖のような絵羽模様(縫い目にまたがる模様)のものは、白生地を裁ってから模様を施し、柄合わせされているため広げたときに1枚の絵のような豪華さがあり、格が高いとされています。
代表的な着物は格が高い順に、振袖・黒留め袖⇒訪問着⇒色無地⇒紬・小紋となります。
●第一礼装(振袖・黒留め袖)
・振袖
未婚女性の第一礼装とされる。
成人式、披露宴、本振袖は自身の花嫁衣装としても着用する。
豪華な絵羽模様が特徴で、総模様で袖の長さで本振袖、中振袖、小振袖があり、本振袖が最も格式が高いとされています。
・黒留め袖
既婚女性の第一礼装。
新郎新婦の母や親族として出席する結婚式、仲人や主賓として出席する披露宴、主催者として出席する式典などに着用する。
黒地のちりめんや綸子の裾に豪華な絵羽模様を配した品格の高い着物です。
●フォーマル
・訪問着
紋の有無や柄によって改まった席への礼装になる。
紋付きの伝統的な柄なら披露宴や格式ある祝賀会への出席、七五三やお宮参りなど神社仏閣の行事、正式な茶席にも。無紋ならカジュアルなパーティやお年賀の挨拶などにも。
●フォーマルとカジュアルの間
・色無地
略礼装。ちりめんや綸子などの白生地を一色染にしたもの。
地模様や色味によって華やかな印象にもなり、1つ紋を付け格のある帯と合わせれば準礼装に。無紋なら食事会や観劇などに。落ち着いた色なら弔事にも着用できます。
●カジュアル(紬・小紋)
・紬
独特の風合いが魅力で、高価ではあるものの礼装として着用されることはなく、お稽古や発表会、観劇など外出着として気負わないおしゃれに向く着物。
織りならではの張りのあるしゃっきりとした質感を楽しめます。
・小紋
全体に模様が繰り返されている型染めのきものです。
軽い外出着としてみなされ、お稽古・観劇・友人との食事などに、向くきものです。
柄が多種多様ですので、模様の格によって着る場所を考慮する場合があります。
―帯との合わせ方で知っておいた方がいいことはありますか?
帯にも格があり着物と格を合わせるのがベストです。また着物と帯は季節感が合っていると洒落た着こなしになります。
帯にもさまざまな種類があるのですが、代表的な3種類の帯を紹介します。 格の高い順に、袋帯⇒名古屋帯⇒半幅帯です。
・袋帯
筒状に織られた格式のある帯で、裏が無地で軽量化されている。フォーマルなシーンに着用するほか模様次第で幅広く合わせられます。
・名古屋帯
袋帯よりも短く軽い帯で、胴に巻く部分が半幅のため結びやすく、お稽古や観劇、美術展巡りなどカジュアルなお出かけに着用します。
・半幅帯
帯地の幅が普通の半分で、芯を入れて仕立てた帯です。 結び方をアレンジしやすく、帯柄によって普段着から外出着まで使えます。
初心者におすすめの着物の選び方
―着物と帯のそれぞれの格がポイントなのですね。実際に初めて一着揃えるなら、何がおすすめですか?
自分に合わせて一着購入したい場合、色無地+帯2種類を揃えておけば、応用範囲が広く着物の出番が増えます。金糸銀糸を使った袋帯なら華やかなパーティやお茶席の装いに、モダンな柄の半幅帯でカジュアルに締めれば友人との食事会や観劇、旅行にも仰々しくなりすぎません。
―着物の専門店には入ってみたいけれど勇気がいります。心がけた方が良いことはありますか?
気負わなず、気軽な気持ちで大丈夫ですよ! 和装小物もいろいろあるので、雑貨を見る感覚でのぞいて、着物の価格や必要な小物について何でも聞いてみてください。店を訪れるときは、フードがない洋服や、首元が出る前開きのシャツなどがおすすめ。試着や反物を合わせたときに着物姿をイメージしやすくなります。畳の上に上がるので裸足は避け、柄物よりも無地の白かベージュの靴下の方がよりイメージしやすくなります。
―手持ちの着物のアレンジの相談などでも大丈夫ですか?
もちろんです。親御さんや親類から譲り受けた着物を着たいというご相談を受けることもあります。身丈(うなじから足のくるぶしまで)や、裄丈(首の後ろから手首のくるぶしまで)、身巾(おくみ幅+前幅+後ろ幅×2を足し合わせた長さ)が合えば着られるのですが、一度しまってある着物を出して状態を確認することが必要なんです。絹は天然繊維のため衣類の虫やカビの被害に遭いやすく、着物の縫い糸である絹糸は25年程度で切れてしまうことがあるからです。専門店へ持って行き問題がないか見てもらうと安心ですよ。
着物初心者の不安、着付けと所作は場数で解消
―着物の選び方はイメージがついてきました。他には、初心者の方は着付けに不安がある方も多いと思うのですが、どうしたら自分で着付けられるようになりますか?
解決策は場数を踏むことです。着付けは、今は投稿動画などで丁寧に手順紹介をしているので、見ながら自分で着付けてまず手順を覚えましょう。わからないところがあればお店の人に聞けば、喜んで教えてくれるはずです。自分で着ると、人に着付けてもらうよりも、腰ひもなどが当たっても気にならない位置を見つけやすく、力加減も調整できます。
特に半幅帯なら、袋帯の半分の幅のため扱いやすく、浴衣のような感覚でちょうちょ結びなどの簡単な結び方で楽しめます。
―着物の所作のポイントを教えてください。
帯を締めると自然と背筋が伸びるものですが、肩の力は抜き、心持ち肩甲骨を寄せ、胸を張るようにした方が着なれた美しい姿勢になります。袖口から腕が見えすぎないように、近くにあるものを取るときも、たもとを軽く押さえるようにしましょう。
―着崩れ対策や着こなしの注意点はありますか? ポイントは裾さばき。洋服のときの半分の歩幅を意識して歩くと着崩れしません。階段では右手で着物の重ね(上前と下前の両方)をつまんで少し持ち上げるようにしましょう。裾を汚さずに上り下りでき、見た目にもエレガント。着崩れ対策にはバッグに腰紐を1本しのばせておくと安心です。
―草履の足が痛くならないようにする方法はありますか?
履き方にコツがあります。草履は奥まで履ききるのではなく、鼻緒のところで足先が止まるもの。足の指先を引っ掛けるぐらいの感覚で履きます。履いたときにかかとが1㎝ほど出るのが正しいサイズ感。草履を選ぶときは、鼻緒が柔らかくて太めのものにするといいでしょう。
色・柄合小物で旬な着こなしを目指す
―今風な着物の着こなしはありますか?
あえて帯と着物を同色で揃える着こなしや、楽器と音符の着物と帯などテーマをもった柄合わせ、トランプや幾何学などモダンな柄を楽しむ方も増えています。
着物感覚をカジュアルに取り入れるならデニム生地で仕立て上がっている着物があります。揃える小物も最小限で済み、ブーツやアクセサリーを取り入れて和洋折衷のコーディネートも可能です。
―小物で遊ぶとしたらおすすめはどのようなものがありますか?
一番手軽に変化を付けられるのが、衿元の半衿を変えることです。半衿とは長襦袢に付ける衿のことで、首元の汚れから襦袢を守るためのものですが、顔のすぐ下に位置するため、顔映りや印象が変わりオシャレアイテムとして楽しめます。 季節で色を変えたり、刺繍入りで立体感を出したり、ビーズ付きやレースなどで華やぎを添えたり、さまざまです。
―いろいろと試してみたくなりますね。最後に、読者の皆さんへメッセージをお願いします。
着物はハードルが高いと思われるかもしれませんが、勇気を持って着てみてください。着ていると自然と身のこなしもふさわしいものになっていきますし、何より着ると晴れやかな気持ちになれます。
私はちょっと気持ちが下がっているときに、着物を着て出かけるのですが、カフェでもちょっと良い席に案内してもらえたり、見知らぬ方からほめてもらえたりして、うつむき気味だった気分も、背筋の伸びた前向きな状態になれるんです。着物を着ることで出会いが広がりますし、日本の伝統と文化を守ることにもつながります。ぜひ皆さんにも日常の中で着物を楽しんでもらいたいです。
text 中城 邦子
華やかな着物姿でのおでかけは晴れやかな気分になれそうですね。さまざまなアレンジができて楽しみ方も広がっています。皆さんも今年は着物デビューしてみませんか?