南極で試された防災術。アサヒ社員が伝える災害への備え
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9月1日の防災の日を前に、災害への備えを見直してみませんか。
アサヒグループには、会社の枠を越えて自分の世界を広げながら働く社員がいます。
今回ご紹介するのは、アサヒグループ食品で食品開発に携わった後、会社を一時休職し、第62次南極地域観測隊の越冬隊員として約1年間、南極・昭和基地で過ごした小山 徹です。
極限の環境で得た経験から見えてきた“本当に必要な備え”や、日常に生かせる防災の心構えについて聞きました。
プロフィール
小山 徹
2008年に旧日本エフディ(現アサヒグループ食品)へ入社し、フリーズドライ開発を担当。
2020年9月に休職し、第62次南極地域観測隊に環境保全担当として参加。帰国後はフリーズドライ開発業務に復帰し、現在は商品開発二部で、フリーズドライ技術を活用した原料開発に携わっている。
INDEX
人生を変えた2つの出会い。オーストラリアでの偶然が南極へ
飲食店やソフトウェア会社で働いた後、「新しい世界に挑戦したい」との思いからワーキングホリデーでオーストラリアに渡った小山。仲間との食事会で手料理を振る舞う中で、「食を通じて人を笑顔にする喜び」に目覚めたことが、食品開発者を志す原点となりました。
オーストラリアでの生活には、もうひとつ忘れられない出来事が。それは、物資の補充で港に停泊していた南極観測船「しらせ」との出会いです。帰国後、日本エフディ(現アサヒグループ食品)に入社し、フリーズドライ開発を担当します。
入社後の研修で、軽量で保存性に優れたフリーズドライ食品が南極観測隊の活動を支えていることを知ります。かつてオーストラリアで南極観測船「しらせ」と出会ったことをきっかけに芽生えた南極への思いと、自分の仕事がつながった瞬間でした。
「いつか自分も南極の地に立つことになるのかもしれない」と縁を感じ、憧れは少しずつ目標へと変わっていきます。
極限の昭和基地で挑んだ「環境保全」と「食」のサポート
2020年9月、念願だった第62次南極地域観測隊への参加が決まります。
「決まった時は正直、“よっしゃ!”という気持ちもありましたが、それ以上に不安の方が大きかったですね」と小山は当時を振り返ります。
「国家事業として60年以上続いてきた南極観測に、自分が本当に役に立てるのだろうか。そんなプレッシャーがずっとありました」
憧れだった南極。しかし夢が現実になった瞬間、喜びだけではなく期待と不安を抱えながら、新たな挑戦が始まりました。
第62次南極地域観測隊で小山が担ったのは、環境保全担当。南極では、持ち込んだものは原則持ち帰るのがルール。観測活動で発生する廃棄物の管理や回収に加え、隊員たちの生活で出る排水を処理する設備の運転・管理も担当します。
一方で、食品メーカーで培った知識を生かせる場面もありました。
「南極は、ある意味で究極の孤立環境です。そんな場所で、人は何を食べると元気に過ごせるのか。そのデータを残したいと思っていました」
観測期間中は毎日の食事内容を記録し、健康診断や栄養に関するデータを大学の研究機関と共有。南極における食事と健康の関係を調べる研究に協力しました。
環境保全担当として南極の自然を守りながら、食品開発者として人の健康を支える。小山ならではの視点で、観測活動を支えました。
南極での活動で最も過酷だった出来事を尋ねると、小山は「汚水処理設備のトラブル」を挙げます。環境保全担当として管理していた汚水処理設備が突如停止。原因がすぐには分からず、復旧までおよそ24時間を要しました。設備が止まると、基地の生活にも大きな影響が及びます。お風呂や洗濯は使用禁止。食器洗いもできず、トイレも節水対応を余儀なくされるなど、基地全体が災害時の避難所のような状態になりました。
「何とかしなければいけないというプレッシャーは大きかったですね」
トラブル対応に追われ、クタクタになって外へ出た深夜。空一面に広がった息を呑むほど美しいオーロラや、野生のペンギンたちとの出会い、そして過酷な作業の後に仲間と囲んだ温かい食卓は、今も忘れられない宝物です。
「食事の時間が、一番心が落ち着く時間でしたね」
極限環境での生活だからこそ、仲間たちと食卓を囲むひとときがほっとできる時間だったと当時を振り返ります。
「ないなら、つくる」が当たり前の世界。南極の限られた環境が教えてくれた防災の本質
南極での生活を振り返る中で、小山が何度も口にしたのが、「工夫」という言葉です。
物資が限られた南極では、必要なものがすぐに手に入るわけではありません。
「ないものは、ない。だから工夫して何とかするしかないんです」
例えば、機械が故障しても交換用の部品がないことがあります。そんな時は、別の機械から使えるものを探し、組み合わせたり加工したりしながら代用品をつくります。
小山はこの極限下での体験を通じて、防災における本質に気づいたと言います。
「南極は物資が限られ、すぐに助けを呼べる環境ではありません。災害時も同じで、『あるものでどう生き抜くか』が大切になるんです」
この経験を通じて、小山は「備えること」の重要性を強く実感したといいます。日頃の準備や仲間との助け合いが、想定外の事態を乗り越える力になるからです。
南極で得た学びを、一人でも多くの人に伝えたい。その思いから防災士の資格を取得。
現在はアサヒグループ食品で働く傍ら、自らの体験をもとにした防災啓発や講演活動を積極的に行っています。
防災士・小山が教える!家庭で備えておきたいアイテム
もしもの時に備え、普段からどのようなものを準備しておくべきなのでしょうか。
小山がおすすめする防災アイテムを紹介します。
まず備えたい、防災の基本アイテム
●通信遮断に強い「ラジオ」
大規模災害時には通信障害が発生し、スマートフォンが思うように使えなくなる場合もあり、家族や友人の安否、被害状況、避難情報などが分からず、不安が大きくなります。通信環境が復旧するまでの間、ラジオは貴重な情報源になります。
●温かい食を生む「カセットコンロ」
水とカセットボンベがあればお湯を沸かすことができ、温かい食事や飲み物の確保に役立ちます。ライフラインが止まった際にも活躍する、備えておきたい防災アイテムのひとつです。
もしもの時も、いつもの味で。家族を守る“食の備え”
●フリーズドライのおみそ汁
災害時は、食べ慣れたものが大きな安心感につながります。いつもの味は、不安な状況の中でも心を落ち着かせてくれる存在です。いざという時のために非常食を備えるだけでなく、日頃から食べているものをストックしておくことも、防災の重要な備えのひとつです。フリーズドライのおみそ汁は、お湯を注ぐだけで手軽に温かいおみそ汁を楽しむことができます。
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※9月7日発売からパッケージ等刷新予定です
●シリアルバー
手軽に持ち運ぶことができ、おいしく栄養補給ができるため災害時にもおすすめです。
シリアルタイプの1本満足バーは“ザクザク食感”のシリアルをチョコレートでコーティングしているため食べ応えも十分。さまざまな種類があるので、自分のお気に入りをストックしておくのがおすすめです。
●家族構成に合わせた離乳食・介護食
「家族全員分を同じもので備える」のではなく、それぞれの年齢や状況に合わせて準備しておくことも、防災における大切なポイントです。赤ちゃんや小さなお子さんは年齢によって食べられるものが異なり、大人用の食品で代用できない場合もあります。そのため、いざという時にも安心して食べられるよう、普段から食べ慣れているベビーフードをストックしておくことがおすすめです。
アサヒグループ食品では、粉ミルク・ベビーフードから1歳半〜2歳頃を目安とした「プレキッズフード」まで、子どもの成長段階に合わせた味付け、具材の大きさ、固さ、量、素材のおいしさにこだわった安全・安心な商品を展開しています。
高齢者がいる家庭では、柔らかい食品や介護食の備蓄も検討したいところ。災害時は普段と異なる環境で生活することになり、食べ慣れたものや食べやすいものが心身の負担軽減につながります。
●偏ってしまう栄養バランスを補うサプリメント
非常時には、いつもと違う生活を余儀なくされることがあります。避難所生活や物資の不足によって食事が偏り、必要な栄養を十分に取れず、体調を崩すことも珍しくありません。
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●水が使えない時の口腔ケア用品
災害時には断水によって、普段のように歯を磨くことが難しくなる場合があります。
しかし、口の中を清潔に保つことは、避難生活中の健康管理においても大切です。
口腔ケア用品まで備えている方は、それほど多くありません。水が十分に使えない状況でも利用できるオーラルケア用品を備えておくことで、非常時の不快感を軽減し、お口の健康維持にもつながります。
そんなときに活躍するのが「口腔ケアウエッティー」。水なしで口の中を清潔にできるウエットティッシュ型のケア用品を用意しておくと安心です。
「水が使えない時の口腔ケアと災害時の食生活について」
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必要なのは“モノ”以上に“心構え”。孤独にならず動くこと
南極での体験を経て小山が最も強調するのが、防災における「自助」の心構えです。
「災害時には、どれだけ備えていても必ず想定外のことが起こります。だからこそ、『自分だけは大丈夫』という思い込みを捨て、『まさか』が起きることを前提に行動することが大切です」
観測隊でも、大前提となるのは『自分の身は自分で守る』という考え方。極地ではすぐに助けを呼べる環境ではなく、一人ひとりが安全を意識して行動する必要があります。
また、避難所へ行っても支援物資がすぐに届くとは限りません。そのため、食料や飲料水、携帯トイレなどを日頃から備え、自分で持ち出せる状態にしておくことが欠かせません。
さらに小山は、身体の安全と同じくらい「心の健康」にも目を向けてほしいと話します。
「災害に遭うと、不安やストレスは誰にでもあります。だからこそ、絶対に孤独にならないことが重要です。一人でいる時間が長くなると、どうしても気持ちが落ち込んでしまうんです。南極でも一人で部屋に閉じこもることは推奨されませんでした」
気持ちが沈みそうな時こそ気持ちが沈みそうな時こそ、無理のない範囲で誰かの役に立つことや、自分にできることに目を向けることも大切だと話します。
text 「ハレの日、アサヒ」編集部


南極での経験を通じて小山が伝えたいのは、特別な防災術ではなく、「自分の身は自分で守る」というシンプルな心構え。日頃の小さな備えと意識の積み重ねが、いざという時に自分や大切な人を守る力になります。9月1日の「防災の日」をきっかけに、家庭の備えをもう一度見直してみませんか。