プロが教えるウイスキーの魅力と“父の日”のおすすめ
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もうすぐ父の日ですね。毎年何を贈ろうか悩む方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、父の日の定番のプレゼントであるお酒の中から、ちょっと難しいイメージを持っている方も多いであろうウイスキーについて、その魅力とおすすめの商品をプロに伝授してもらいます。
INDEX
教えてくれるのはこの人!マスター・オブ・ウイスキー佐藤一
「マスター・オブ・ウイスキー」とは 、全国で13名(2023年3月時点)しかいないウイスキーのプロのこと。ウイスキー文化研究所主催のウイスキーコニサー資格認定試験の最難関資格であり、一次試験の論文、二次試験の筆記試験、口頭試問、官能試験によって認定されます。今回は、2019年に60代で初めての合格者となり10人目のマスターとして認定されたアサヒビールの佐藤一に話を聞きました。
これだけは覚えよう。ウイスキーの基礎講座
ウイスキーは蒸溜してつくられるアルコール度数の高いお酒です。国によって細かい定義は異なりますが、以下の三つを満たすものがウイスキーと呼ばれます。
①原料に大麦やトウモロコシ、ライ麦といった穀類を使用
②糖化、発酵、蒸溜を行ってつくった「蒸溜酒」
③木製の樽に貯蔵して、熟成させる
難しく感じるウイスキーも原料と製法の違いを押さえれば大丈夫です。
●モルトウイスキー
一般的には大麦麦芽(モルト)を原料に単式蒸溜機でつくられ、原料由来の香りや味わいが色濃く残っているのが特徴です。
●グレーンウイスキー
トウモロコシやライ麦、小麦などの穀類を主原料に、連続式蒸溜機を使用してつくられ、複数回蒸溜を重ねるので、軽やかでクセの少ない、穏やかな味わいのものが多いです。
●ブレンデッドウイスキー
モルトウイスキーとグレーンウイスキーを組み合わせたもので、それぞれの良さを生かし欠点を補うため、飲みやすくバランスの良いウイスキーになります。
モルトウイスキー、グレーンウイスキー、ブレンデッドウイスキー、それぞれ異なる味わいと魅力があります。
ここからは少し上級編です。「ピュアモルト」や「シングルモルト」という言葉を聞いたことはありませんか?
ピュアモルトは原料にモルトのみを使用したウイスキーのこと。シングルモルトは1カ所の蒸溜所のモルト原酒のみを使ったウイスキーで、複数の蒸溜所の原酒を使ったウイスキーはブレンデッドモルトと呼ばれています。1カ所の蒸溜所で熟成した一つの樽のモルト原酒を、そのまま瓶詰めしたものをシングルカスク(カスクとは樽のこと)といいます。
プロが語る「父の日の贈り物にウイスキーが最適なワケ」
①香りの複雑さと変化の中からお気に入りを見つける楽しさ
香りの複雑さと変化を楽しめるところがウイスキーの魅力の一つです。アルコールはさまざまな成分をよく溶かす性質があるのですが、ウイスキーはアルコール度数が高い分、より多くの香気成分が液中に溶け込んでいて、実に約1000種もの香気成分があると言われています。
例えば、甘い香りと一口に言っても、はちみつやバニラ、チョコレート、カラメルなど例えられる香りはさまざま。それらが掛け合わさることによって、より一層複雑な香りを生んでいます。さらに香りは時間の経過とともに変化するんです。揮発性の異なる香りによって、グラスに注いだ直後と30分後で香りの違いを楽しめます。また少しお水を加えただけでも新たな香りが出て来ますよ。お気に入りの1杯を見つけてみてください。
②今後も生まれ続ける新たな味わい
2010年代から国内外で新たなウイスキー蒸溜所が続々と誕生しています。ある蒸溜所の隣に蒸溜所を建てて同じ設備を入れてつくっても同じ味のウイスキーはつくれないと言われるほど、ウイスキーは蒸溜所によって味わいが異なります。今後も新しい味わいのウイスキーがどんどん生まれる、楽しみが広がるお酒と言えます。
③飾っても飲んでも長く楽しめる
アルコール度数が高く劣化しづらいので、開栓してからもしっかりと蓋を閉めて適切な温度・直射日光や臭気のある場所さけ冷暗所に置いておけば、長期間かけて少しずつ飲むことができます。
せっかく父の日にもらったらすぐに飲まずにとって置きたいと思う方もいると思うので、しばらく開栓せずに飾っておいて、何年か経ってから楽しむという飲み方もできますよ。私もマスター・オブ・ウイスキーに合格したときに娘からメッセージと刻印入りのウイスキーをもらいまして、もったいなくていまだに飲まずに眺めています。
父の日の贈り物におすすめのウイスキーは?
●愛と感謝を伝えるウイスキー『スーパーニッカ』
まずおすすめしたいのは、華やかな香りとバランスの良いスムーズな口あたり、深く豊かな味わいが特長の『スーパーニッカ』です。個人的には、この価格帯のブレンデッドウイスキーの最高峰だと思っています。
ニッカウヰスキーの創業者である竹鶴政孝が亡き最愛の妻・リタへの哀悼と感謝を込めてつくり上げたウイスキーです。竹鶴の夢をそばで見守り支え続けたリタへ捧げた愛と感謝のウイスキーは、父の日に愛と感謝を伝える1本としてぴったりです。
●スコットランドと日本のモルトが奏でる音楽のようなウイスキー『ニッカ セッション』
次におすすめするのは、ブレンデッドモルトウイスキーの『ニッカ セッション』です。フルーティな味わいと優しい口あたり、かつコクも感じられる商品で、私も家でよく飲むお気に入りです。ウイスキーの世界的なコンテスト「ワールド・ウイスキー・アワード2023」でインターナショナル・ブレンデッドモルト部門のトップの評価となるカテゴリー・ウィナーに選出された実力派です。
30年以上も前からスコットランドでニッカウヰスキーが所有し歴史をつないできたベン・ネヴィスのモルトと、ふくよかな宮城峡モルトと力強い余市モルトなどを使用しています。個性豊かなモルトたちが一つに重なり合って奏でる音楽のようなウイスキーは、誰一人欠けてはならない家族の姿とも通じるように思います。
さまざまな商品があるので迷ってしまうかもしれませんが、ぜひ今年の父の日は、ウイスキー選びにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。