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おうちで楽しむナイトシネマ【3】 ドキュメンタリー映画からひもとくワインの世界

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おうちで楽しむナイトシネマ【3】 ドキュメンタリー映画からひもとくワインの世界

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夜のリラックスタイムはワイン片手に映画を楽しんでみませんか?映画好きのエノテカ社員が、ワイン×映画のマリアージュについて語る連載を全3回にわたりお届けします。最終回は、ワインのドキュメンタリー映画をエノテカ視点で掘り下げます。

プロフィール

佐野昭子(さの あきこ)

タウン誌やフリーの編集業を経て、2006年、ワインの輸入・販売を行うエノテカに入社。現在はエノテカ広報担当。

ワインの世界がぐっと広がって見える。ドキュメンタリーの魅力

ドキュメンタリーの魅力は、普段飲んでいるワインの意外な側面を知ることができること。映画が製作されたその時その時を切り取っているので、ワインの歴史や流れを知るのに最適だと思います。ワインビジネスの裏側や人にフォーカスしたものなど、いろいろなストーリーがあるので、その分楽しみ方も多様です。ワインは意外とドキュメンタリー化されることが多いジャンルではないかと思うのですが、それだけ実際にドラマがあるということなのかなと。ドキュメンタリー映画を観ると、ワインの世界がぐっと広がって見えるのでおすすめですよ。

ワインのグローバリゼーションを描く「モンドヴィーノ」

まず初めに紹介したいのは、ワイン業界の裏側を赤裸々に描いた「モンドヴィーノ」。ソムリエでもあるジョナサン・ノシター監督が手がけた作品です。2004年公開当時のちらしには「この映画を見ると、明日選ぶワインが変わります」というキャッチコピーが書かれているのですが、それほど当時のリアルに切り込んだ内容になっています。

この映画の大きなテーマの一つがワインのグローバリゼーション。1990年代半ばから2000年代前半ごろ、世界で最も影響力のあるワイン評論家と言われていたロバート・パーカー氏にも突撃取材をしています。彼は自身が立ち上げたワイン評価誌『ワイン・アドヴォケイト』でワインを100点満点で評価し、「パーカーポイント」と呼ばれるその採点結果は、ワインの売れ行きや価格を大きく左右するほどに。当時の造り手はパーカーポイントを非常に重視し、良い点をつけてもらうためにパーカー氏好みの味に近づけるなど、その影響力は絶大でした。映画ではパーカー氏と親交の深い“フライングワインメーカー”と称されたミシェル・ロラン氏にも触れているのですが、彼は「空飛ぶ醸造家」の名の通り、世界中を飛び回ってワインのコンサルティング業を行っていました。ノシター監督は、グローバル化が招く味わいの画一化により、ワインの個性がなくなってしまうことを危惧し、並外れた熱量を持って産地やワイン造りに携わる人々を撮ったのです。

また、「テロワール」を重視する人を「テロワリスト」と揶揄する場面(今では考えられません…!)や、最大限オークで香り付けされたワインなど、現代とのギャップを感じるシーンもたくさんあります。最近はどの生産者もテロワールを重視しているので、その土地らしいワインを謳歌できる時代になりましたし、エレガントな味わいが好まれています。しかし当時はパーカー氏好みのパワフルで濃厚な味わいが市場を席捲していたため、樽の風味や香りをたっぷりまとった「マキアージュ(=メイクアップ)」したワインが推奨されていました。ピュアなワイン本来の味を楽しもうという今の潮流とは真逆の動きですよね。

※土地、土壌、気温、気候など、ワインを生み出す全ての環境的要因を表す言葉

関連して紹介したい本がこちら。ジョナサン・ノシター監督が著した『ワインの真実―本当に美味しいワインとは?』です。映画に収まりきらなかったエピソードだけでなく、有名なスペインのワイナリーへ突撃取材に行ったり、ブルゴーニュの名産者であるドミニク・ラフォン氏や俳優兼醸造家のジャン・マルク・ルーロ氏らと対談したりと、監督のワイン愛にあふれた本もぜひ楽しんでみてくださいね。

ジョナサン・ノシター 『ワインの真実―本当に美味しいワインとは?』 (作品社)

ワインビジネスの裏側に迫る「世界一美しいボルドーの秘密」

「モンドヴィーノ」で描かれていたように、2000年代はパーカー氏が高得点を付けたワインの価格がどんどん高騰していきましたが、それはボルドーワインも同様でした。権力と富の象徴であるボルドーワインは、需要の高まりも相まって世界基準のブランド品に。そこへ中国市場の登場という新たな局面を迎えたのです。世界のワインの中でも歴史、資本、手間のかけ方、規模も別格のボルドーワイン繁栄の舞台裏に迫ったのが、「世界一美しいボルドーの秘密」です。

『世界一美しいボルドーの秘密』DVD発売中  
発売:アット エンタテインメント  販売:TCエンタテインメント

ボルドーワインと中国経済の密接な結びつき、加えてワインに魅了された人々を追ったドキュメンタリー。原題は「Red Obsession」、つまり「赤ワインへの執着」です。この映画を観ると、中国がいかに経済大国となり、ボルドーワインへ熱烈な視線を注いでいたかがよく分かります。ブドウの出来が良かった2009年と2010年ヴィンテージは当時、ボルドーワインの価格が特に高騰した年ですが、中国経済の成長期とちょうど重なりました。今や中国はワイン生産国としても頭角を現してきていますが、その契機としてのボルドーワインや、ワインがビジネスとしていかに世界とつながっているかを感じ取っていただけると思います。

また、トップシャトーが多数登場する本作では、ワインにまつわる素敵な言葉にもたくさん出合うことができます。個人的には、ボルドー屈指の生産者であるクリスチャン・ムエックス氏の「優れたワインというのは、名画や名曲と同様、生み出すのが難しい」という言葉が印象に残っています。素晴らしい造り手たちがいかにワインに情熱を注いできたかを垣間見ることができるので、ワイン好きの方にはたまらないのではないでしょうか。

ボルドーワインについてもっと深く知りたいという方におすすめの本が、『ボルドー・バブル崩壊 高騰する「液体資産」の行方』です。ボルドーワインバブルの背景が詳しく書かれており、この中の中国経済にフォーカスしたのが「世界一美しいボルドーの秘密」となります(書籍の発行は映画製作より4年ほど先行しています)。合わせて読んでいただくとと、よりボルドーワインへの理解が深まるのでおすすめですよ。

山本昭彦『ボルドー・バブル崩壊 高騰する「液体資産」の行方』(講談社)

ワインの数だけ人生がある。「チーム・ジンバブエのソムリエたち」

最後に紹介したいのは、人間ドラマが魅力の「チーム・ジンバブエのソムリエたち」です。「世界一美しいボルドーの秘密」の製作・監督・脚本のワーウィック・ロスと、同作品でエグゼクティブ・プロデューサーを務めたロバート・コーが手がけた作品。ワインのない国からやって来た4人の難民が世界最高峰のブラインドテイスティング大会に挑戦する姿を追ったドキュメンタリーです。経済的困難に陥ったジンバブエを逃れ、南アフリカに移住した背景など、世界の現状や社会情勢を踏まえてワインの世界を見てみるのもまた違った視点で奥深いと思います。

『チーム・ジンバブエのソムリエたち』DVD発売中 
発売:アルバトロス株式会社

4人は南アフリカで初めてワインを口にした事で人生を一変させます。天性の味覚と努力で南アフリカのトップソムリエにまで上り詰めた彼らは厳しいトレーニングを積み、ジンバブエ代表としてワイン版オリンピック「世界ブラインドワイン・テイスティング選手権」に初挑戦することに。西洋文化の権威とも言えるような大会にチャレンジする姿に元気をもらえますし、彼らのガッツある姿がありありと描かれていて、私も頑張ろうと奮い立たせてくれるような作品です。

ワインは西洋文化の文脈が強く、ヨーロッパ中心のイメージを持たれている方も多いかもしれませんが、この映画ではワインという飲み物を通じて多様性を感じ取ることができます。世界中でワインに携わる、全ての人の人生に想いを馳せることができる映画なのではないかなと思います。ワインは多様性が魅力なので、ワインの数だけ人生があることを感じ取っていただけるとうれしいですね。

3回にわたってお届けしたワイン×映画の楽しみ方、いかがでしたか?ワインだけでもおいしいですし、映画だけでももちろん楽しいですが、2つをつなげてみるとより世界も広がって見えると思います。夜のリラックスタイムは、ぜひワインと映画のマリアージュ楽しんでみてくださいね。

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