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<絵本専門士>瀬戸口あゆみさんに聞く!絵本のハナシ

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<絵本専門士>瀬戸口あゆみさんに聞く!絵本のハナシ

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こんにちは!子育て中の読者のみなさんは、お子さんに絵本をよく読まれますか?

ハレの日、アサヒ編集部内で子育て中のメンバーと話していると「親子の触れ合いの時間として欠かさず絵本を読んでいる」という声もあれば、「最近忙しくてあまり時間が取れていなくて…」という声も。中には「子どもが絵本にあまり興味を持ってくれない」と悩みがちなメンバーもいました。

「毎日忙しい中で絵本とのちょうどいい距離感の付き合い方ってどんなのだろう?」そんな疑問に対するヒントを得るべく、絵本専門士の資格を持ち、読み聞かせとパントマイムを合わせたパフォーマンスユニット『おむすびひろば』としてもご活躍中の、瀬戸口あゆみさんにお話を聞いてきました!

プロフィール

瀬戸口 あゆみ

絵本のオンラインショップで本やグッズ販売の仕事をするかたわら、夫であるパントマイミストの金子しんぺいと一緒にパフォーマンスユニット『おむすびひろば』として活動中。絵本専門士の資格保有者。お父様はNHK「おかあさんといっしょ」8代目たいそうのおにいさんを務めた瀬戸口清文。プライベートでは二児の子育て中!

絵本の魅力を発信する『絵本専門士』

―お忙しい中ありがとうございます!

よろしくお願いします!

―まずは、瀬戸口さんもお持ちの絵本専門士さんというのはどういった資格なのか教えてください。

 (主催する国立青少年振興機構の)サイトなどにはいろいろな定義が書いているんですけど、私は、子どもたちの読書活動を推進するために、絵本について知識を持つ人が、それぞれの方法で絵本の魅力を発信していくために作られた資格。という風に捉えています。

―「それぞれの方法で」とのことですが、活動範囲の決まりはないのですね。

そうなんです。取得したら私たちは割と放牧される感じで(笑)。自由に活動させてもらえますね。私みたいに読み聞かせをしている人もいれば、絵本カフェをされている方もいたり。

―絵本専門士を目指されるのは瀬戸口さんのように絵本関係のお仕事をされている方が多いですか?

絵本専門士の講座を受けるための受講資格があって、司書や保育士の資格を持っていたり、出版社とかで絵本に関わる実務を3年以上経験しているなど、絵本に関係する資格や活動をしている方が対象になっています。最近はアナウンサーの方など、いろいろな方が受講されている印象はありますね。

―間口が広がっているんですね。講座ではどんなことを学ぶのですか?

絵本に関して本当にいろいろなことを学びますね。絵本の歴史を学んだり、絵本が出版されるまでのお話を編集者や作家の方々から聞いたり。あとは、書評の書き方とか、お話し会を実際にされているプロの方に実演していただいたり。

―絵本に関して幅広く学ばれるのですね。絵本が好きな人にとっては楽しそうな講座ですよね。

楽しいですよ!ただ、出される課題がちょっと多いっていうのはありますけど(笑)

―ちなみに調べていると『認定絵本士』という資格もあることを知ったのですが、違いはどんなものになりますか?

認定絵本士は学生が取得できるものになります。学生と言っても全員が対象ではなく、「認定絵本士養成制度」の授業を受けられる学校に限りますが。私の言葉でざっくり説明すると「若者にも絵本について詳しくなってもらって、絵本の魅力を発信できる世代の幅を広げて盛り上げていこう!」というような存在かと思います!

―なるほど!若い世代の感覚で絵本の魅力を発信してくれているんですね。

きっかけは友人へのプレゼント選びから

―瀬戸口さん自身についても聞かせてください。今のように絵本と深く関わるようになったきっかけは何でしたか?

大学生の時にサークルの友人へのプレゼントを考えているときに、たまたま『Letters from Fairytale-ぼくのおとぎ話からの手紙』(作・絵:荒井良二 出版社:フレーベル館 ※現在は品切れ・重版未定)という本を書店で見つけたんですね。
その本が最初から最後まで、誰かへのお手紙になっている構成で「誰かに絵本をプレゼントするときって、その絵本(の内容自体)が相手へのお手紙みたいになるな」って感じたんです。

―相手に伝えたいことを絵本の文章が代弁してくれる。みたいなイメージですか?

はい。そこで絵本の魅力に気付いて、誕生日プレゼントなどに絵本を選ぶことが多くなりました。選ぶうちに、自分自身もどんどん好きになっていったという感じですね。

―そこから読み聞かせ活動にはどうつながっていきましたか?

絵本が好きって言う話を周囲によくしていたら、友人のお母さんが開いている読み聞かせ会に誘ってもらって、初めて子どもたちの前で読み聞かせをしたんです。
その時、読んでいてすごく気持ちいいなと感じて。子どもたちが反応してくれるのも嬉しいし、周りの大人から褒められることも嬉しくて、我ながら向いているぞと思いました。それからずっと読み聞かせ活動をしています。

―それまでは人前で何かされるご経験はありましたか?

ストリートダンスサークルに入っていたので、人前に出ること自体は好きでした。あとは、子どもの頃から「声が通るね」って褒められることが多くて、卒業式にみんなで叫ぶやつとか(笑)。振り返ってみると、幼少期から今の活動につながる種は持っていたのかなと思います。

―(笑)。おむすびひろばとして保育園や商業施設など様々な場所でご活躍されていますが、これまでで印象に残っているイベントはありますか?

『かいけつゾロリのビブリオバトル』という小学生向けのイベントの中で「低学年の子でも参加できて、ビブリオバトル※に通ずる企画を考えて、当日の司会進行もする」というお仕事があったんですね。
子どもたちに、「かいけつゾロリ」シリーズ(ポプラ社 作:原ゆたか)の、自分が好きなところを紹介してもらって、観客のみなさんに「いいね!」とか「がんばれ!」と思ったら札を上げてもらうっていう形にしたんですけど、反響も大きくて達成感がありましたね。

「かいけつゾロリポージングチャレンジ」っていう遊びうたを、作者の原ゆたか先生にも監修していただいて作ったりもして、それも盛り上がりました!

編集部注:ビブリオバトル=規定時間内に自分がおすすめする本の書評を発表するなどして「どの本が一番読みたくなったか?」を投票して競い合うという読書会の形式。

参考:公式サイトのイベントレポート

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絵本とパントマイム おむすびひろば(@omusubihiroba)がシェアした投稿

―育児やお仕事もあってお忙しい中でパフォーマンスを続けられるモチベーションはどんなところにありますか?

パフォーマンスをすることが楽しくて、お客さんに喜んでもらえることが何よりのモチベーションになっています。育児と仕事に必死でイライラしちゃうこともあるのですが、それを発散できる場でもあります。

―「子どもが絵本をなかなか読んでくれない」と感じるお母さん、お父さんも多いですが、私たちでもできるような読み聞かせのテクニックってありますか?

テクニックって言えるか分からないですけど、私はよく読み聞かせ屋さんになって「いらっしゃいませー。今日はどれにしますか?」って問いかけたり、人形を使って「(人形が)この絵本を読みたいって言ってるけど一緒に聞いてくれる?」って誘ってみたりしますよ。

お母さんとお父さんが居る時には、一人が読み手になって、もう一人がお子さんと一緒に聞き手になるのもいいですね。

―楽しみながら読むモードになってもらえそうですね。

あとは、セリフを好きなアニメキャラ風の喋り方や語尾にアレンジしちゃうのも楽しいですよ。

―自由な楽しみ方ですね!それなら乗ってくれそうです。

性、戦争…多様化している作品テーマ

―ここからは絵本選びについて聞かせてください!最近の絵本にはどんなトレンドがありますか?

2年前ぐらいのタイミングだと思うんですけど、性をテーマにした絵本が一気に増えたなという印象があります。あとは戦争をテーマにした絵本や、もう少し直近でいくと、LGBTQ+をテーマにした作品も徐々に増えているのかなと思います。

―絵本のテーマも世相を表すのですね。具体的にどんな作品がありますか?

たとえば、『ぼくのスカート』(小学館 文・絵 ピーター・ブラウン 訳・監修 日高康晴)は、いつも服を着ない男の子が、お母さんの服を着たりお化粧をして、その姿を両親も”その子らしさ”として受け入れて一緒におしゃれを楽しむっていうお話です。

あとは、『ホオナニ、フラおどります』(さ・え・ら書房 文: ヘザー・ゲイル 絵: ミカ・ソング 訳: クウレイナニ橋本)もそうですね。トランスジェンダーの女の子が、男性のフラダンスチームに参加するお話です。

―子どもと一緒に考えながら読めそうな作品ですね!

『ホオナニ、フラおどります』(さ・え・ら書房 作: ヘザー・ゲイル 絵: ミカ・ソング 訳: クウレイナニ橋本)

「自分は男と女のまんなかにいる」ホオナニはいつもそう思っていました。
そんなある日、ホオナニの学校で、男子フラのチームがつくられることに。地区のイベントでステージに立つのです。メンバーになりたくてたまらないホオナニは、オーディションをうけ、男子フラチームに参加することになりました。(中略) 自分の居場所を求め、みずからの手でつかみとるまでの姿を描いた、実話に基づく物語です。(引用元:さ・え・ら書房)

子どもを夢中にする「全身を使って楽しめる絵本」

―ここからは瀬戸口さんにお勧め絵本をご紹介いただきます。

はい!二つのテーマを設定して、それぞれ二冊選びました。まず最初のテーマが、絵本にまだあまり興味がない子でも楽しんでもらいやすい「全身で楽しめる絵本」です。

一冊目は『おでこはめえほん(1) けっこんしき』(ブロンズ新社 作:鈴木のりたけ)という作品。おでこに色々な人や生きものの頭をはめて楽しむ絵本なんですけど、おむすびひろばのパフォーマンスでも定番の作品です。
お父さん、お母さんの二人でやっているところを見せても楽しいですし、子どもとやり合うのもいいんじゃないかと思っています。

ブロンズ新社YouTubeチャンネルより、おむすびひろばパフォーマンス動画

―絵本がおでこにはめられるようにくり抜かれてる!視覚的に楽しめるから赤ちゃんでも楽しめそうですね。

もう一つは『リモコン』(くもん出版 作:新井洋行)という、本自体がリモコンのように押せるようになっている作品です。例えば「変な顔をする」ボタンを子どもに押してもらって、大人が変顔をするんです。慣れてきたら役割が逆でも楽しめると思います。
すごく盛り上がるんですけど、寝る前に読むと子どもがハイテンションになって寝られなくなっちゃいますね(笑)。絵本を読むことにまだあまり馴染んでいない子でも「絵本を使って楽しむ」っていうやり方だと楽しめるんじゃないかなと思って選びました。

『おでこはめえほん(1) けっこんしき』(ブロンズ新社 作:鈴木のりたけ)

はなよめさんや音楽家、粋な板前さんに宇宙人!? おめでたいけっこんしきを舞台に、みんなでたのしく大変身!(引用元:ブロンズ新社)

『リモコン』(くもん出版 作:新井洋行)

ページをめくるとあらわれるのは、カラフルなリモコンの絵。「この えほんは リモコンなんだよ。うそだと おもうなら ボタンを おしてみて」お子さまがボタンをおしたら、おもいっきり変な顔をしてあげてください。(中略)子どもがボタンを押したり、大人がボタンを押したり、親子で自由に遊びを広げてたっぷり楽しんでください。(引用元:くもん出版)

一緒に笑ったり考えたり。「大人も子どもも楽しい絵本」

―続いて、二つ目のテーマですね。

はい!次は「大人も子どもも楽しい絵本」を選びました。読み聞かせの前提として、読み手が楽しまないとその場も楽しくならないと思っているので、子どもだけじゃなく読んでいる大人も一緒に楽しめる作品を選びました。

まずは『おじいちゃんのくしゃみ』(福音館書店 作・絵:阿部結)です。作者の阿部結さんは、2020年にデビューされたとても注目されている作家さんです。
このおじいちゃん、孫に嫌がられるほどくしゃみが激しくて。でも実はリンゴが落とせたり、ライオンやカバなんかも吹き飛ばせたり、世界一すごいくしゃみなんです。最終的に思いもよらないところまで飛んで行っちゃうのですが…もう、ラストのおじいちゃんの顔なんて最高。裏表紙までぜひ注目してもらいたいです。

―誌面をご紹介できないのが残念ですが大人も爆笑しちゃう作品ですね(笑)。そして、四冊目です!

最後は、はらぺこめがねさんというご夫婦でされているユニットの『たべてうんこしてねる』(岩崎書店 作:はらぺこめがね)という作品です。

ヨダレが出るほどおいしそうな食べ物が印象的な作家さんで、食べ物自体がメインとなっている作品がたくさん刊行されています。

でもこちらは少し雰囲気が違って、テーマの一つに「生きること」が強く感じられる作品です。タイトルの「たべてうんこしてねる」の言葉が繰り返されて展開していくのですが、その言葉とリズムがまず楽しいんですよね。

絵は何気ない日常が描かれているのですが、途中で友達との別れもあって。悲しいことがあっても、やっぱり食べてうんこして寝る。
さりげなく描かれた太陽や宇宙のモチーフも気になる存在で、「自分にとっては必死な日々が、大きな中の小さな一つなんだなぁ」とも感じました。あとは育児で疲れた一日の終わりに、「ああ今日も子どもが食べてうんこして寝てよかった」って考えたら、励まされるんじゃないかなって(笑)。

―コロナ禍に作られたということで、当たり前の生活の大切さを読み手側が考えさせてもらえる作品ですね。素晴らしい四冊を選んでいただきありがとうございました!

『おじいちゃんのくしゃみ』(福音館書店 作・絵:阿部結)

いつも大迷惑なおじいちゃんの大きなくしゃみ。けれども、じつは、すごいことができるくしゃみなんです。くしゃみの勢いで、木の上のりんごを落とせるし、猛獣を追い払えるし、なんと空を飛んでどこにでも行けるのだそう。女の子は信じませんが、おじいちゃんは大きなくしゃみをしたかと思うと、空高くどこかへ飛んでいってしまいました。おじいちゃんは、いったいどこへ? おじいちゃんと孫娘の微笑ましい交流を描いた、ユーモアあふれるお話です。
(引用:福音館書店)

『たべてうんこしてねる』(岩崎書店 作:はらぺこめがね)

たべて、うんこして、ねる。食と人をテーマに創作活動を続ける夫婦ユニットはらぺこめがねが、コロナ禍中に見つめ直した愛おしい日々の営み。兄妹の成長と共に描く。(引用元:岩崎書店)

絵本を読んだ時間が宝物に

―最後に読者のみなさんに絵本の楽しみ方についてメッセージをお願いします。

おむすびひろばの名前には「絵本で読み手と聞き手の笑顔を結ぶ」という意味を込めています。もし絵本選びに悩んだときには、「子どもにもこの面白さを共有したいな、一緒に笑いたいな」と思う作品を選んでみてください。
親子で好きなシーンや言葉に出会えたら、一緒に絵本を読んだ時間が、心にずっと残る宝物のような思い出になるはずです。

―たくさんお話を聞かせていただき、ありがとうございました!

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