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角界の“料理の鉄人”出羽海部屋 高崎親方に聞く、「ちゃんこ」の世界

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角界の“料理の鉄人”出羽海部屋 高崎親方に聞く、「ちゃんこ」の世界

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寒さが厳しいこの時期は、温かいお鍋が恋しくなりますよね。

一口に「鍋」と言ってもたくさんの種類がありますが、今回注目したいのは“本物の”ちゃんこ鍋。角界のグルメ親方として活躍する出羽海部屋の高崎親方に、相撲部屋の”ちゃんこ”秘話を伺いました。簡単に真似できるおすすめレシピ、貴重な儀式の様子も紹介します!

プロフィール

高崎親方(元幕内・金開山)

本名: 松山 龍水
生年月日: 1976年1月7日
出身地: 長崎県大村市
【年表】
1991年 初土俵
1998年 新十両の場所で十両優勝
1998年 新入幕
1999年 2回目の十両優勝
2000年 3回目の十両優勝
現在は、年寄「高崎」として、地方場所(大阪)・指導普及部・社会貢献部を担当。
【通算成績】
生涯成績: 466勝448敗35休
幕内戦績: 102勝146敗7休

知っているようで意外と知らない、奥深き“ちゃんこ鍋”

ーそもそもちゃんこ鍋の“ちゃんこ”とはどういう意味なのでしょうか?

「ちゃんこ鍋」という言葉が定着していますが、実は“ちゃんこ”とは「力士の食事全般」を指します。「今日のちゃんこ(ごはん)はなに?」といった使い方ですね。

そして“ちゃんこ”の語源は諸説ありますが、私は「ちゃん」=父、「こ」=子、という説が一番しっくりきています。師匠がお父さんで弟子が子ども。相撲部屋はみんな家族。食事を一緒に囲むことでそういった意識がより醸成されるように感じます。

ー親子で囲むから「ちゃんこ」。相撲部屋は家族なんだなと改めて感じますね。その中で鍋だけが浸透していると感じていますが、実際に相撲部屋で鍋が出ることは多いのでしょうか?

そうですね。家庭でも同じだと思いますが、簡単で作りやすいじゃないですか。おかずにもなるし、別で汁物を用意しなくてもいい。力士はよく食べるし、人数が多いので足りなくなったら継ぎ足していけるし、効率的ということで昔からよく作られてきたと思います。
野菜や肉を継ぎ足していくと、だしもどんどん出てくるし、最初に食べるのと最後に食べるのでは味も違うんですよ。

ちゃんこ鍋は寄せ鍋だと思われがちですが、相撲部屋では鶏肉なら最後まで鶏肉しか入れません。先ほども言ったようにどんどん継ぎ足してみんなで食べていくので、いろいろな種類の肉や魚を入れて味が混ざり合わないように配慮しています。

最後の〆も同じですね。鍋で雑炊を作ってしまうと、後の人が食べられません。そのためご飯をよそった自分の器にだしをかけてお茶漬けのようにして食べたり、うどんを別で茹でてそこに鍋のだしをかけたりしています。

―ちゃんこは力士の方が作るのでしょうか?

力士が数人ずつ班をつくって当番制で回しています。昔の文献にも出てくるのですが、大正時代から一班がちゃんこ番、二班が風呂番、三班が便所番という感じで担当しています。

ちゃんこ番に関しては、地方場所に行くと寝食を共にするので、私も一緒に料理をします。鶏ガラスープといったら昔はガラからちゃんと炊いてだしを取っていたけど、今は粉末のだしもカット済みの食材もある。とても便利ですが、私は手間暇をかけることの大事さも伝えたいと思っています。おいしいのはもちろん、相手を思いやることにもつながりますから。相撲部屋には15~16歳の子が新弟子として入ってくるので、こうした集団生活の中で人として大事なことも伝えていきたいです。

―丁寧に作ることの大事さは分かりつつ、15歳の子が部屋全員の食事を担当するのは若干プレッシャーになりそうですが…

もちろん新弟子だけで班を組むことはありませんし、最初は洗い物とか、漬物を切るようなところから始めてもらいます。あとはやっぱりセンスがあるかどうかは大事ですね(笑)

私は昔から食べることが好きで、例えば100円のお小遣いで周りの友達がおやつを買う中、料理の材料を買うような子どもでした。両親も共働きでしたし、自然と料理をする環境だったので、“センス”が磨かれたのかもしれません(笑)

屈強な身体は食事から!力士の食へのこだわりとは

―食事のメニューはどのように決めているのでしょうか?

そんなに特別なことはしていなくて、冷蔵庫を見てメニューを考えるとか、本当に家庭の延長です。でも旬のものを食べることと、買ってきた食材を無駄にしないようにとは言います。

例えば冬にほうれん草を使うレシピだったら、同じく旬の小松菜で代用したらいいんじゃないか、みたいな。魚を1匹買ったら刺身にして、頭は煮付けにしたり、残った身を照り焼きにしたり。手間かもしれないけど、そこは結構口うるさく言っていますね。

―力士の皆さんはどれくらいの量を食べるのでしょうか?

たくさん食べることだけがいいというわけではありません。もちろん体を大きくする事は大事なことですが、出羽海部屋だと250kgの力士もいれば、まだ70~80kgの子もいます。自分が動けるベストな体重が100kgならそれ以上増やす必要もないし、今の体重が動きづらいのであれば食事を制限することも必要。

何が何でも食べる!というわけではなく、太りやすさにも違いがあるし、稽古や番付にあった体力を維持するために食事量をそれぞれで管理しています。

あとは足りなければ自分で作って食べても良いんです。冷蔵庫の食材はなんでも使えるし、お酒だって飲めます。そんなに特別じゃないでしょ?

―なんだか親近感がありますね。出羽海部屋オリジナルのちゃんこ鍋や、よく使う食材はありますか?

鶏ガラで取っただしに砂糖、しょうゆ、みりんで味付けしたものが多いですね。他の部屋であまり入れないと聞いたのはじゃがいもかな。うちでは結構入れます。

うちならではというわけではないですが、鍋は継ぎ足して食べるため、煮込む時間が長いとドロドロになってしまう。それを防ぐためにネギの代わりにニラを使いますね。あとは油揚げも入れます。だしを吸ってとてもおいしいですよ。

そして鍋も「ごはんのおかず」なので、しっかりした味付けが多いです。皆さんは湯豆腐もポン酢で食べることが多いと思いますが、相撲部屋ではタレも作ります。このレシピは後ほどお伝えしますね!

「相撲協会の名物となるちゃんこを作りたい」親方の目標は土俵の外にも!

―料理好きが高じて日本相撲協会のグルメ商品開発にも携わっているとお聞きしました。開発をする上で大切にしていることはありますか?

それはもう…大手メーカーが発売していない隙間的な商品を見つけることかな(笑)代表的なメーカーがあれば、みんなそっちに行くじゃないですか。将来的に別に相撲に興味がなくても「日本相撲協会のブランドはおいしい」「コスパがいい」と選んでもらいたい。そのためには商品数が少ないカテゴリーを見つけることも大事かなと思っています。

ありがたいことに日本全国を回る仕事なので、その土地土地のおいしいものを食べながら、「次はこれがいいな」なんて日々考えているんですよ。 あとは「日本相撲協会のちゃんこ鍋といえばこれ!」というものを作りたいですね。本当にいろんな味付けがあるけれども、国技館名物と言えば焼き鳥といったように、いつか「この味!」というものを作りたいなと思っています。

親方直伝!出羽海部屋の具沢山な湯豆腐レシピ

高崎親方から出羽海部屋の名物「湯豆腐」のレシピを教わりました。特徴は何と言っても風味豊かで濃厚な付けダレ。豆腐以外の鍋の具材には好きなものを入れてくださいね。この日は鶏肉やきのこ、白菜などを入れています。

湯豆腐のタレ
(材料) 4人分
・しょうゆ 150cc
・(お好みで)みりん 10cc
・ネギ1本
・卵 2個
・青のり 適量
・かつお節 小分け2パック
・水150cc

ネギは刻んでおく。

沸騰したお湯にかつお節を入れ、だしを取る。

だし汁にしょうゆを注ぐ。お好みでみりんも入れ、冷ましておく。
この時かつお節は入れたままに!

冷めたら溶き卵をゆっくりと注いでいく。
この時熱いままだと卵が固まってしまうので注意。

最後に青のりと刻んだネギを入れたら完成!

実食!

編集部員も取材後にいただきましたが、今まで食べたことのない湯豆腐でした。ごはんが進む味付けでとってもおいしかったです。

相撲部屋では食事の順番も番付によって決まっていて、親方や関取、後援会などのお客さまから先に食べ始め、若い力士はその後。そして親方やお客さまが食事をしている時には、お茶の用意やごはんのおかわりなど、すぐ動けるように待機しています。

私たちは“お客さま”という立場だったので若い力士の皆さんよりも先にいただきました。普段とは違う環境で「なんだか悪いな…」という気持ちがあったのですが、親方曰く「これも修行」。相手を思いやる心、気遣いを大事にされているのを肌で感じた時間でした。

【番外編】土俵祭り

取材が行われた12月下旬、この日はちょうど「土俵祭」の日ということで特別に参加させていただきました。

土俵祭とは立行司が祭主となり、祝詞を奏上し、供物を捧げて場所中の安全と興行の成功、さらには国家の安泰、五穀豊穣を祈念するものです。
土俵の中央に穴を開け、塩、昆布、するめ、勝栗、洗米、かやの実などの縁起物が沈められます。
理事長、審判部の親方衆、全行司、溜会幹部、協会関係者が出席して行われます。

日本相撲協会より引用

開催場所ごとに新しく土俵が作られていること、皆さん知っていましたか?開催場所だけでなく、相撲部屋でも本場所前に「土俵つき」が終わると、「土俵祭」が執り行われます。
正装である着物に身を包んだ親方や力士の皆さんが一堂に会し、厳かな雰囲気の中で祭主の祝詞が朗々と響き渡ります。土俵の四隅への献酒や、土俵下に縁起物を納めるなど、相撲は神事が起源であると改めて感じられる貴重な祭事です。

ちゃんこの語源から親方直伝のレシピまで紹介した今回の記事、いかがでしたか。ぜひあったまる湯豆腐レシピをご家庭で作ってみてくださいね。

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