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日本は傘の消費量が多い!老舗傘メーカーが挑む“捨てたくない傘”に迫る

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日本は傘の消費量が多い!老舗傘メーカーが挑む“捨てたくない傘”に迫る

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日本では年間約1.3億本もの洋傘が消費されています。※1 その中でもビニール傘は手ごろな分、置き忘れてしまったり、すぐに捨ててしまったりする方も多いのではないでしょうか。ところが傘はリサイクルが難しく焼却や埋め立てで処分するしかなく、深刻な環境問題となっています。そんな課題と向き合い、新たな提案をしようと立ち上がったのが創業88年の傘メーカー、柴田株式会社です。傘がフルオーダーできるブランド「SUN」に込めた思いについて、お話を聞きました。

(※1)日本洋傘振興協会(http://www.jupa.gr.jp/pages/faq )の調査による

日本では膨大な数の傘が日々捨てられています

―はじめに、日本の傘の事情について柴田社長に伺いたいです。

柴田社長(以下、柴田):日本はビニール傘がとても多い国であるのと同時に、流通している傘のほとんどが3,000円以下の安価なものです。傘の寿命はだいたい2、3年だと言われていますし、より気軽なビニール傘だと使い捨てされる方も多い。そんなこんなで、関東だけでも1年で300トン以上もの傘ゴミが出てしまっています。

―想像もつかないほど膨大な数ですね……。

柴田:そうなんです。しかも骨組みと生地、取っ手など素材がそれぞれ違うので分別が難しく、リサイクルもしにくいのです。となると焼却や埋め立て処分になるわけですが、埋め立ては環境に悪影響を与えますし、焼却するにしてもCO2を大量に排出してしまいます。こういった経緯で政府からも傘ゴミ問題を解決するようにとの働きかけがあり、これまでいろんなメーカーがさまざまな方法に挑戦してきました。

例えば、パーツごとに分解できる構造にして生地・金属・プラスチック別にリサイクルへと回すなどです。けれど、なかなか根付かずに取りやめになったりしていて。

そこで私たちが考えたのが、傘自体のファッション性を再評価することでした。

「ずっと手元に置いておきたい」「捨てたくない」と思える傘なら、壊れたら修理をして長く使ってもらえるはず。どこかに置き忘れても、取りに戻りたいと思えるはず。

そんな思いから、お客さまがイチから選べるフルオーダーの傘ブランド「SUN」が生まれました。

SUNのショールーム

フルオーダーは職人の技術力とデザインを形にする力が重要

―フルオーダーとなると職人の技術力も必要になりそうです。職人の皆さんはどのように傘作りに取り組んでいるのですか?

傘職人Oさん(以下、O):社内の職人は3名おりまして、外部のベテラン職人にも手伝っていただきながら1本1本作っています。どの業界も同じだと思うのですが、傘職人もやはり人手不足が深刻で、60代・70代の職人がほとんどです。一方当社では私を含む職人は20代・30代のメンバーで構成されているので、若手ならではの発想を盛り込みながら仕上げられるのが強みのひとつだと思っています。

―フルオーダーならではの難しさもあるのでしょうか。

傘職人Iさん(以下、I):骨の本数や軸の太さ、生地の幅・長さなどさまざまなオーダーをいただくので、一つひとつの傘に向き合いながら作る必要があります。まずは開き具合を決めるための型となる、大きな三角形の定規を手作りし、定規に合わせて生地を裁断したら、生地の模様に合わせて縫い進め、骨とも組み合わせていきます。大量生産ではできない、細かで丁寧な作業を経て1本ができます。私は芸術系の大学を卒業し、5年前に転職して職人の道を歩み始めたので、まだまだベテラン職人には敵わないのですが、日々指導いただきつつ、オーダーされたお客さまのお顔を想像しながら傘作りに励んでいます。

O:でも、傘のイメージを左右する開き具合については、Iさんがいちばん得意な部分だよね。1cm単位で調整しているので、仕上がりもとても美しく、ご満足いただけると自信を持って言えます。

手仕事:手作りの三角定規を使って生地を裁断
手仕事:骨を通し、骨とカバーを縫い付けている様子

数百通りの組み合わせを検討できる楽しさ

―実際にはどのようなお客さまが多いのですか?

営業担当Mさん(以下、M):老若男女問わずさまざまな方がいらっしゃいますが、特に多いのはギフトですね。パートナーさまへのプレゼントだったり、80歳のお祝いにお孫さんがオーダーされたり。これから社会人になるご自分の記念にとオーダーされる方もいました。傘はユニセックスで年齢も流行もそれほど問わないアイテムなので、プレゼントにもちょうどよく、いろんな需要にマッチします。

I:私たち職人は直接お客さまとお話することはないのですが、注文票などに「どなたからどなたへのご注文」と書かれているので、お顔やプレゼントされるシーンを想像しながら大切にお作りしています。

―骨組みだけ変えたい、生地だけ別のものに、といった需要にも対応されているのですか?

M:そうですね。サステナブルの観点からも、他社メーカーのものでも弊社で使用している部材であればご要望には出来る限り応えたいと思っています。当社でお作りしたオーダー傘に関しては、スタートして数年ということもあってまだ修理のご要望はいただいていないのですが、お問い合わせいただければすぐに対応いたします。

―フルオーダーはどれにしようか選ぶ時間がすごくかかりそうですね。

M:オーダーいただく際は素材がたくさん揃っているショールームにお越しいただくか、オンラインかになるのですが、だいたい皆さま2時間ぐらいは悩まれています。

流木の持ち手をはじめ、染色工房で特別に染め上げた生地など、本当にたくさんの素材がありますので。

なお、仕上がりのイメージは3Dモデルを使って瞬時にお見せできます。弊社からのアドバイスも参考にしていただきつつ、とことん悩んでオーダーしていただきたいです!

傘の生地や取っ手を選んでいる様子

傘の寿命は2、3年ではない!長く使うためのコツって?

―今持っている傘を長く使うためのコツを柴田社長に教えていただきたいです。

柴田:まず日々のメンテナンスがとても大事です。濡れたまま畳んでそのまま放置していたら骨は傷みますし、生地の色も変わって汚れもつきやすくなります。防水・撥水もどんどん取れていくので、使ったあとは必ず陰干しして乾かすが必要です。さらに、定期的に防水スプレーや撥水スプレーをかけることもおすすめしたいです。

―ありがとうございます。これからの展望もぜひ伺いたいです。

柴田:フルオーダーの「SUN」とともに、最近「A・A・RA(アアラ)」というブランドもスタートしました。天気の日も心が弾むような傘をと、カラー骨や印象的なプリント柄、クリエイターとコラボした傘などこれまでになかったデザインを取り揃えました。「SUN」も「A・A・RA」も、障がいのある方と一緒に作るなど、社会福祉にも貢献したいと考えています。このように“大切に思える傘”を手に入れて、修理をしながら長く使っていただきたいです。私自身も10年以上使っている傘があります!

「SUN」や「A・A・RA」を通じて、少しでも傘のゴミを減らせればと願っています。

長く使うことは持続可能性に結びついているのだと、改めて感じられたお話でした。まずは、“いつもの傘”の選び方から見直してみてはいかがですか?

インタビュー・文:木村桂子

プロフィール

SUN  ~ オーダーメイド傘店 ~

創業85年の傘メーカー。世界一と言われる傘ゴミ問題に対し「世界に一本だけの傘」をお客さまと作ることで、傘の消費量削減を目指しています。完全オーダーメイド傘店「SUN」を2022年6月にオープン。

コーポレートサイト:https://sun.shibata-kemie.com/
note:https://note.com/sun34

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