ビールづくりから広がる課題解決!副産物で食や健康課題と向き合う
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皆さんは、ビールづくりの副産物が私たちの生活に役立つ優れものに生まれ変わっていることをご存じですか?副産物を活用しようという研究の歴史は古く、1930年にはアップサイクルした商品も発売されているんです。今回はそんなビールの副産物がどのように活用されているのかを、ビールづくりの工程とともに紹介します。
INDEX
ビールはどうやってつくられるのか?基本の原料とつくり方
まずはビールの基本的な原料とつくり方を見ていきましょう。
ビールの原料と使い方は国や地域によってさまざまですが、欠かせない原料と言えば麦芽・ホップ・水。日本では酒税法によって副原料として、米・とうもろこし(コーン)・でんぷん(スターチ)・糖類等を使用することができます。これらに微生物の働きによる発酵が加わることで、おいしいビールが生まれます。
中味の製造工程は大まかに、1.製麦→2.仕込み→3.発酵・熟成→4.ろ過 に分けることができます。
1.製麦
①主に二条大麦(ビール大麦)を使用し、麦に水を十分吸収させて発芽させます。
②いい具合に芽が出たところで乾燥させて発芽を止めます。
③根を取り除き、麦芽(モルト)の完成です。
2.仕込
①「仕込釜」で砕いた麦芽の一部と米、コーン、スターチなどの副原料を煮ます。
②「仕込槽」でさらに麦芽とお湯を加えることで、液の中のでんぷん質が麦芽糖に変わり、麦汁になります。
③「麦汁ろ過槽」で麦汁をろ過し、「あめ湯」という透明な麦汁にします。
④ビールの苦みや香りをつくるホップを加えて煮た後、冷却して、発酵タンクに送ります。
3.発酵・熟成
①冷却機で冷やした麦汁にビール酵母を加えて発酵させると、酵母が麦汁の糖やタンパク質からアルコールやビールらしい香りを生成します。
②約1週間の発酵を経てできたビールを若ビールと呼びます。
③できあがった若ビールを数10日間低温で熟成させます。
4.ろ過
酵母などを除去すると清澄なビールのできあがり!
ビール粕は牛や豚のおいしい飼料に生まれ変わる
ビールのつくり方2.③仕込工程の「麦汁ろ過槽」で残されたビール粕(モルトフィード)は、飼料として活用されています。
全国の工場から回収したビール粕の水分を約65%まで絞り、乳酸菌を添加します。コンテナバックに充填し、袋内から空気を抜いて安定的に素早く発酵させると、おいしい飼料「モルトフィード・サイレージ」の完成です。
役目を終えた酵母は、胃腸薬や調味料から農業資材まで幅広く生まれ変わる
ビールのつくり方4.で最後にろ過された酵母は、麦汁の栄養をたっぷりと吸収していて、タンパク質や必須アミノ酸、ビタミンB群、各種ミネラルなど、多くの栄養素が含まれているため、さまざまな用途で活用されています。
この酵母を乾燥させた「乾燥酵母」を有効成分とする「エビオス錠」は、<指定医薬部外品>胃腸・栄養補給薬です。有効成分である乾燥酵母が弱った胃腸をいたわり、胃腸の働きを活発にします。
酵母から抽出した「酵母エキス」はうま味成分や栄養素を含み、コクやうま味・風味を増すことができるため、プラントベースフード(植物性代替食品)にお肉らしい風味を足すなど、加工食品を中心に健康食品、培地、ペットフードなどさまざまな分野で使用されています。
酵母の周りを殻のように覆っている「酵母細胞壁」は、酵母エキスの製造過程で得られる副産物です。この酵母細胞壁由来の農業資材は、イネなどの植物の根の成長促進や免疫力の向上などの効果が実証されています。芝の品質向上、農薬や化学肥料の使用量の低減により環境負荷の低減にも役立つものとして、全国の農園に加えてゴルフ場や野球場などでも使用されています。
いかがでしたか?ビールをおいしく飲むだけでなく、副産物からさまざまなお役立ち商品が生まれています。今後はぜひ注目してみてください!