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エノテカ創業者・廣瀬恭久が語る「ワインのチカラ」 Vol.4

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エノテカ創業者・廣瀬恭久が語る「ワインのチカラ」 Vol.4

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ワインは面白い!そう語るのは、独自のビジネスモデルでワイン事業を展開している「エノテカ」の創業者・廣瀬恭久。長年にわたりワインと向き合ってきた廣瀬が語るワインの魅力を全4回にわたりお伝えします。連載4回目となる最終回は“ヒロセ流”ワインの選び方、楽しみ方です。

プロフィール

廣瀬恭久(ひろせ やすひさ) 

1949年兵庫県生まれ。73年に慶応義塾大学を卒業。鉄鋼系商社を経て、実家の半導体部品メーカーに入社。88年にエノテカを創業。2015年にアサヒグループ入りし、現在はエノテカ顧問。

いつまでたっても“シロウト”だから面白い!

ワインは難しいと思って敬遠される方もいらっしゃるかもしれませんが、実は、私もワインについてはいつまでたっても“シロウト”だと思っています。

「ヴィンテージ」という言葉を聞いたことがある方もいらっしゃると思うのですが、これはぶどうの収穫年のことを言います。ワインはぶどうからできるため、天候やその土地の環境など自然に大きく左右される飲み物です。

毎年気候は異なるので、ぶどうの出来もそれに伴って異なり、同じ銘柄のワインでも、毎年全く同じものができるということはあり得ません。お天道様は将来を見通しているかもしれませんが、造り手も我々も今年のワインがどうなるかということはわからないわけです。

さらにワインは熟成させるものなので、できてからでもある程度年月がたたないと、その本当の姿は表れてこない。樽の状態でテイスティングした時と、瓶詰されてすぐの時、5年たった時、10年たった時とでは味わいが変わってくることから、経年による変化を予測することが難しい。そういう意味で、ワインに先生はおらず、みんなシロウトだと思うのです。ジャーナリストでさえ、過去に下した評価と、年月がたった現在の味わいが違う結果になるということがよくあります。

自然との闘いの中から生まれてくるワイン。予想外に素晴らしい味わいになることもありますし、その逆もあります。ただ、どちらになってもワインは飲むたびに新しい発見があります。それが面白いですし、それゆえ私も一生シロウトだなと思うのです。自然の前ではみんな平等。ですので、みなさんも身構えずにワインを楽しんでいただければと思います。

有名シャトーオーナーとのテイスティング対決は思わぬ結果に・・・

ワインの味がわかるか、わからないかという話では、1つ面白いエピソードがあります。ボルドーのある有名なシャトーを経営している大御所とブラインドテイスティングをした時のことです。

ブラインドテイスティングというのは、一般的に銘柄を伏せて、どこのどんなワインかわからない状態で飲んで、そのワインの産地やぶどうの品種、収穫年などを推測していくものです。

今から20年ぐらい前でしたが、ボルドーに出張した際、次の予定までに少し時間があったので、オーナーとブラインドテイスティングをやろうということになりました。シャトーの赤ワイン4アイテムが瓶にカバーがかかった状態で出てきました。

私はそのうち2つは銘柄とヴィンテージまで当てることができたのですけど、残りの2つは勘違いをして外してしまったのです。ちょっと失礼なことしてしまったなぁ・・・と悔やんだのですが、なんとそのオーナーは4つともすべて間違えてしまったんです。

冗談交じりに「自分のところのワインの味がわからなくて大丈夫か?!」と言ったら、「何言ってるんだ、ヒロセ。例えば女性が数人ヒロセの前に並んでいてテーブルに手を置いている場合、目隠しして全員の手を触ってみて、どれがヒロセのワイフの手かわかるか?」と返してきたのです。奥さんの手なんてそれほど触っていないですし(笑)、「参りました。あなたの言う通りです」となりました。彼の大ヒットのジョークで1本取られたと思いました。

ただ、実際そういうものなんですよね。ワインについてはうんちくを語る人もたくさんいますし、知らないと恥ずかしいのではないかと身構える人もいるかと思いますが、難しく考えないで大丈夫です。

自分の感性で「おいしいか」「おいしくないか」

私のワインに対する判断基準はただ一つ。「おいしいか」「おいしくないか」、これだけです。

おいしければそれでいいのに、ジャーナリストがつけた評価や銘柄、稀少だから、高価だからなどの理由で、本質を忘れてしまうことがあります。おいしいと思うものだったら、評論家がどう言ってるとか、良い年のワインだからということではなくて、実際に飲んでみて、本当にこのワインはおいしいな、もう1杯飲みたいな、と思うワインを選ぶべきだと思いますね。

1,500円でおいしいものもたくさんあるし、一方でいくら値段が高くて、世の中で名前が通っているワインでもおいしくなかったら、エノテカでは決して販売しません。おいしくないというのは、最初の1口は良くても飲み続けられない、2~3人で1本開けられないようなものですね。そうしたワインは、自分には合っていないワインだなと思います。

私はワインに関してはシンプルに考えた方が良いと思っています。これまでお話ししてきたように、生産者のストーリーや想いももちろん大切ですけれど、大前提として、おいしいということがあって、初めて生産者の想いやワイン造りに対する姿勢が結果的にストーリーになっていくんじゃないかと思います。おいしいワインだからこそ、そこにストーリーが生まれる。私たちはそれを届けていきたいと思います。

エノテカのショップで新たなワインとの出会いを

みなさんには既成概念にとらわれず、いろんなタイプのワインにトライしていただきたいです。最初に好みにとらわれると範囲が狭くなってしまいます。タイプでいうと赤・白・ロゼ、最近はオレンジなどもありますね。産地も欧州、豪州、南米、米国など伝統的な銘醸地に加えて、日本も含めて本当に世界中のワインの質が上がってきました。たくさん試して、自分がおいしいと思うワインを見つけていただきたいです。

私の場合は、出張で現地のレストランやワインショップに行き、ソムリエに自分の好きなワインの説明をして、そのソムリエが薦めるワインを試します。そのように自分から好みを言って、誰かから紹介してもらうこともあるし、ワインの出会いはさまざまなケースがありますので、いろんなタイプのワインを飲んで自分がおいしいと思う基準を持つことが大事だと思っています。

そういった意味では、エノテカのショップにぜひいらしてください。エノテカでは私やスタッフがおいしいと思うワインしか置いていません。スタッフは私と同じように、たくさんのワインを飲んで、おいしさの基準をもっています。お客さまのお好みに合わせて、お選びするということはもちろんですけれども、それに加えて、お客さまのお好みに合いそうな一歩先のものをお薦めするということもできます。

ぜひお気軽にスタッフにお声をかけてください。きっと新たなワインとの出会いがあるはずです。

みなさんに驚かれるのですが、私の自宅のワインセラーには約3万本のワインがあります。自分のためにワインを買っておきたいと思い始めたのは、エノテカの経営が軌道に乗ってきた2000年頃で徐々に集めていきました。今はもうできるだけ本数は減らしていきたいと思っているのですが、やはりこのワインがどんな味わいに変化するか気になるので買ってしまいます。

これらは生産者やエノテカのお客さま、社員、友人、家族などと飲むことが多いのですが、これからもできるだけたくさんのワインのおいしさを分かち合っていきたいと思います。

最後に繰り返しになりますが、ワインの周りにはほほ笑みや愛があり、人と人を結びつけるチカラがあります。私はこれからも「ワインのチカラ」で人生をもっと楽しみたい。皆さんも「ワインのチカラ」で人生を豊かに楽しんでいただきたいです。

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