誰もが笑顔で飲酒を楽しむために<前編>
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お酒は長い人類の歴史の中で、日々の暮らしに喜びと潤いをもたらすとともに、お祝い事など人生の節目においても、大きな役割を果たしてきました。一方で、「不適切な飲酒」という社会課題も存在しています。
今回は、アサヒグループホールディングスでサステナビリティを担当するエグゼクティブ・アドバイザーのモニカ・アゴクスに、アルコール関連問題やお酒を取り巻く環境の変化、グローバルに展開する酒類メーカーとしての責務について話を聞きました。
INDEX
「不適切な飲酒」と世界を取り巻く状況について
ー「不適切な飲酒」というのは、どんなことでしょうか?
多くの方は適切な方法でお酒と付き合っていますが、一部の「不適切な飲酒」によって、飲酒する自身の健康だけでなく、友人や家族、社会に対して好ましくない影響を与えてしまう場合があるのも残念ながら事実です。具体的には、多量飲酒や各国が定める飲酒可能年齢未満(日本の場合は20歳未満)による飲酒、妊産婦飲酒や飲酒運転が挙げられます。
ーこれらの問題は、海外でも同じですか?
世界保健機関(WHO)によると、「不適切な飲酒」によって、世界で年間300万人が亡くなっています。2010年にWHO は「アルコールの有害な使用を低減するための世界戦略」を策定し、2022年、この戦略を実現するためのアクションプランとして、「2030年までに全世界における有害なアルコール使用の20%削減すること」を掲げました。世界的にも「不適切な飲酒」は課題になっています。
アルコール関連問題の解決に向けて
ーアサヒグループはこの問題を、どのように捉えているのでしょうか?
私たちはお客さまに対して、一人あたりのアルコール摂取量を増やすことを求めておらず、適切な飲酒をして欲しいと願っています。日本、欧州、オセアニア、東南アジアなど世界各地で、お酒や清涼飲料、食品を製造・販売していますが、お酒に関しては、誰もがいつでもどこでも飲めるものではないと考えています。
お酒の魅力はそのおいしさとともに、日常に楽しさや喜びを与えることです。アサヒグループは、「期待を超えるおいしさ、楽しい生活文化の創造」をミッションに掲げています。お酒を味わい、家族や仲間と楽しく過ごす時間こそが、記憶に残るべき瞬間だと考えています。だからこそ私たちは、「不適切な飲酒」という課題に毅然として取り組まなければなりません。
ー解決に向けて、どのような取り組みをしていますか?
アサヒグループでは、大きく分けて4つの取り組みを進めています。「責任あるマーケティング」「適切な情報開示」「ポートフォリオ・イノベーション」「課題解決のために人々をつなぐ」ことです。
ーそれぞれ、具体的にはどんな取り組みでしょうか?
1点目の「責任あるマーケティング」については、私たちが商品を展開する地域や国の法規制からさらに踏み込み、各地の文化的、倫理的な需要に合わせたマーケティング方針や自主基準を策定しています。昨今では、飲酒可能年齢未満の人がオンライン上でお酒の広告にアクセスできないように、Meta社やGoogle社などデジタルプラットフォームを持つ関連企業と協力してDigital Guiding Principlesという世界基準を遵守できるよう取り組んでいます。
2点目は「適切な情報開示」です。お客さまが十分な情報を得た上で購入する商品を決定できるように環境を整えることが、メーカーとしての重要な役割であると考えているため、適切な飲酒を促すメッセージや成分・栄養情報を、商品パッケージやオンライン上で表示しています。
ー3つ目の「ポートフォリオ・イノベーション」は何ですか?
多様なライフスタイルや体調に合わせて選べるように、ノンアルコール飲料やアルコール度数の低い飲料の新しいポートフォリオを構築し、シェア拡大に努めています。グローバルにおいて、ビール類とRTD、ノンアルコール飲料のカテゴリー内に占めるノンアルコール飲料・アルコール度数3.5%以下のアルコール飲料の販売量構成比を2025年までに15%まで伸ばすと掲げています。
ー日本に限定すると「2025年までにアルコール度数3.5%以下のアルコール、及びノンアルコール商品の販売容量構成比を20%※へ拡大」をアサヒビールが目指していますね。ノンアルコールやアルコール度数の低い飲料を重視しているのはなぜですか?
例えば、「お酒を飲みたくない、もしくはアルコールは抑えたいけれども、ビールの味は楽しみたい」という時に、選択できる商品を取りそろえていることが重要だと私たちは考えています。
アルコール度数の “選択肢がある”ことは、お客さまが飲酒の質や量、自分に合った飲み方について考える契機となります。自分の体質や体調、状況を考えて「不適切な飲酒」を意識的に避けることが大切です。お酒を飲む時は誰もが幸せであって欲しいと願っています。だからこそ私たちは、世界各国でノンアルコールやアルコール度数の低い新商品の開発やブランドの育成を進めています。
ー日本でも、アルコール度数0.00%の『アサヒ ドライゼロ』などビールテイスト飲料が定着し、アルコール度数0.5%の『アサヒ ビアリー』をはじめとする“微アルコール”ビールテイスト飲料も出てきましたが、世界的にもノンアルコールやアルコール度数の低い商品を強化しているのですね。4つ目「課題解決のために人々をつなげる」とはどういう意味でしょうか?
“期待を超えるおいしさ、楽しい生活文化の創造”を実現するためには、ただ商品のラインアップを拡充するだけでなく、私たちがお酒や飲酒に関する正しい知識を得て、伝えていくことが大切です。
アサヒグループの社員は、適切な飲酒を広めていく伝道師“Responsible Drinking Ambassador(責任ある飲酒の大使)”です。研修などを通して学びを重ね、解決に向けた議論をし、そこで得たものを今度は友人や家族、ステークホルダーに向けて丁寧に伝えていきます。
誰もが飲酒を楽しめる世界を目指す
この記事を読んでいただいている皆さんにもぜひ、Responsible Drinking Ambassadorになっていただきたいです。大切なのは、社内だけでなく、社外の方々とも連携すること。取引先やステークホルダーと協力し、社会全体で「不適切な飲酒」の撲滅に取り組みます。社外との連携で言うと、私たちは現在、IARDのメンバーとして、アルコール関連問題解決に向けた取り組みに注力しています。
ー「IARD」とは何でしょうか?
International Alliance for Responsible Drinking(IARD)というNGOの組織です。ビールやワイン、スピリッツなどのグローバル規模で活動するメーカー14社が集まり、マーケティングや販売、広告宣伝などの分野でグローバルスタンダードを掲げるなど、「不適切な飲酒」の撲滅に向けて取り組んでいます。
ー競合となるメーカー同士でも連携しているのですね。IARD以外で社外のパートナーやステークホルダーとともに活動していることはありますか?
広告を扱うメディアや酒類を提供する飲食店や販売店などと手を携えて、「不適切な飲酒」の撲滅に取り組んでいます。例えば、20歳未満の飲酒を防ぐためにECサイトや販売店では20歳未満の人が酒類を購入できないようにしたり、飲食店では提供しないようにしています。私たちと社外のパートナーやステークホルダーが一丸となり、社会全体で取り組むことが重要です。
ーこの先も飲酒を楽しんでいくためには、何に気をつければ良いでしょうか?
友人や家族と飲み交わす場で、他の人とは違ったお酒を選ぶことに対して、誰もが抵抗感を感じないことが重要です。コミュニケーションにおいて大切にしたいのは、相手を“尊重する”こと。ビールを選ぶのか、ノンアルコールのビールを選ぶのか、また、2杯飲むのか、1杯にしておくのか、その人の生まれ持った体質やその日の体調、状況によっても違いますし、単純に個々人による好みの違いもありますよね。
重要なのは、相手の選択を“尊重する”ことによって、一緒に過ごす時間を楽しむことです。
※アサヒグループホールディングスのプレスルーム2022年10月25日の記事を再構成しています。