ビールの副産物「ビール酵母」から調味料!?
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皆さんが普段飲んでいるビールは、麦汁にビール酵母を加え、アルコール発酵をしてつくられています。実はビールづくりで活躍したビール酵母ってさまざまなものに活用されているんです。その一つが調味料の「酵母エキス」。食の安全性がクローズアップされている昨今、注目を集めている「酵母エキス」について紹介します。
INDEX
「発酵」と「酵母」を知ろう
酵母エキスとは何かを知るために、まずは「発酵」と「酵母」についてひもといていきましょう。「発酵」とは、酵母や乳酸菌、麹菌などの微生物のはたらきによって食物が変化し、人間にとって有益に作用すること。食物のおいしさや栄養価、保存性を高めてくれます。「酵母」は糖をアルコールと炭酸ガスに分解する微生物で、果実の表面、樹液、花の蜜腺、土壌や海洋など自然界に広く分布しています。お酒やパン、みそ・しょうゆなどの発酵食の製造に欠かせない存在です。麦汁にビール酵母を加えてアルコール発酵させるとビールができます。パンが膨らむのも酵母の働きによるものですよね。
「酵母エキス」は、そんな酵母から抽出したエキスです。下記はビール酵母を使用した酵母エキスの製造工程です。麦汁の栄養をたっぷりと吸収したビール酵母には、タンパク質や、必須アミノ酸、ビタミンB群、各種ミネラルなど、多くの栄養素が含まれています。
実は身近な食品に含まれている酵母エキス
アサヒグループは、90年以上前からビール製造時の副産物である「ビール酵母」の活用を研究してきました。その一つである酵母エキスは、海外での販売も積極的に行っており、食品・健康食品・バイオ・化粧品・ペットフードなど幅広い分野で活用されています。食品に添加すると素材のおいしさを引き出し、うま味やコクを引き立てて減塩することもできます。素材に合ったさまざまな種類があり、例えば、スモーク風味を付与したスモークタイプや、特定の風味(ごま、チーズ、カツオ、ビーフなど)を付与した風味特化タイプなどがあります。
カレールーや、即席麺のスープ、パスタソース、つゆの素、スープ、スナック菓子など、いろいろな加工食品に活用されています。皆さんの周りにある商品パッケージを見てみてください。原材料名に「酵母エキス」と記載されているかもしれませんよ。
なぜ今酵母エキスが注目されているの?
ではなぜ今、酵母エキスが注目されているのでしょうか?酵母エキスは一般的にBtoBで使われる加工食品原料なので、使われる食品市場の伸びに依存します。ここ数年拡大している市場の一つに、プラントベースフード市場(以下、PBF)があります。PBFとは、植物由来の原材料を使用した食品のことで、大豆で作られた大豆ミートや、オーツ麦から精製されたオーツミルクなどがあります。このようなPBFにも酵母エキスが使用されているのです。
健康意識の高まりにより、添加物をできるだけ摂取したくないと考える人が増えたことも要因の一つです。酵母エキスは食品添加物ではなく、醤油や昆布エキスなどと同様に食品に分類されています。また、乳酸菌の培地として酵母エキスを使用することもあるため、機能性素材の伸長も影響しています。こういった社会環境から酵母エキスは需要が高まっており、今後も拡大が予想されています。
私たちにおいしい食を届けてくれる「酵母エキス」の活躍に今後も期待です!