元は犬猫苦手!?な社長が取り組む、ペット業界でのアップサイクル
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“フードロス”とは本来まだ食べられるはずなのに廃棄されてしまう食品のことを指します。皆さんの生活の中でも食材を無駄にしてしまうこと、あるのではないでしょうか。
最近はそういった捨てられてしまうはずの食材を活用する「アップサイクル」の取組みを行っている企業も多くありますが、今回注目するのはペット業界。 ペット業界でフードロス問題に取り組む株式会社PETOKOTOの大久保社長にお話を伺いました。
プロフィール
大久保 泰介
1987年、京都生まれ。2012年に同志社大学経済学部を卒業。在学中は、英・ロンドンに留学して、ユニクロUKで「+Jプロジェクト」などのプロモーション業務にも携わる。卒業後、大手ソーシャルゲーム企業・グリー株式会社に入社し、グローバル・新卒採用プロモーション、採用戦略の立案、財務会計・管理会計を経験。2015年に株式会社PETOKOTO(旧株式会社シロップ)を創業。代表取締役社長CEOとしてペット業界の変革を目指す。
INDEX
業界の課題に次々チャレンジ!フードロス問題への思い
―2015年にPETOKOTOを始めた経緯を教えてください。
実は創業の3年前まで、犬や猫は苦手な存在でした。好きになったきっかけは当時お付き合いをしていた方がトイプードルを飼っていたことで、一緒に生活しているうちに怖くない存在だと気づきました。“触らず嫌い”だったんですよね(笑)そうしてだんだんと家族になっていくうちに、ペット産業はデジタル化が進んでいないという課題や、殺処分問題といった社会的課題を抱える産業であることに気づき、起業を決めました。
―起業当初からペットフードを取り扱っていたのでしょうか?
元々はペットの情報を発信する「PETOKOTO MEDIA」というサイトと、保護犬猫のマッチングサービス「OMUSUBI」から取り組んできました。どちらの事業も今も継続していて、「PETOKOTO MEDIA」は平均月間PV数が120万と業界最大級の情報サイトに成長し、「OMUSUBI」は全国270もの保護団体の方に登録いただいていて、知名度も上がってきたのかなと思います。
その後2020年にペットフード事業を始めました。ペットフードは現在ドライフードが主流だと思いますし、私が今一緒に暮らす愛犬にも最初はドライフードをあげていました。ただ自分が犬に生まれ変わったとして毎食ドライフードを食べるのは抵抗があるな、新鮮なものをあげたいなと思うようになったことが、「冷凍フレッシュフード」の開発のきっかけです。
―開発の段階で廃棄予定の食材を活用しようと決めていたのでしょうか?
そうですね。まず日本の一次産業に貢献したいという思いがあり、国産食材をメインにすると決めました。その中で鹿児島県のさつまいも農家の方に話を聞く機会があり、規格外品の廃棄がたくさんあると知りました。私たちが作ろうとしている商品はカットしてスチームして混ぜ合わせるので見た目のいびつさは気にしなくていいと思い、規格外品を活用することにしました。
ただ矛盾もあるなとは思っています。人口が増えていく中、採れる食物が減っていくことで食糧危機が起きる。そのため食材を無駄にしないようにフードロス問題に取り組むのだと思うのですが、当社の商品は人間の食品品質を基準に作っているため、より人間向けの食物の供給を減らしてしまっていますよね。見方によってはフードロス問題解決の逆をいってしまっているなという思いもあり、だからこそ使う食材の有効活用にはこだわっています。
―現在さつまいもの規格外品を採用していますが、今後拡大する予定はありますか?
はい、他の食材にも広げていきたいなと思っています。 一方でフードロス問題が世間的に浸透してきたことから、規格外品を人間の食事・商品で有効活用する事例が増えてきました。そのためそもそも規格外品が市場に出回らないという現状もあるんですよね。あとは少量の規格外品は出てもまとまった数にならないからとやむを得ず廃棄してしまう農家もあります。「規格外品の安定供給」は難しいので、そういった仕組みづくりにも取り組んでいきたいですね。
大久保社長がこだわる“真のヒューマングレード”
―規格外品と聞くと「人が食べられないような品質のものを犬や猫に与えているのかな?」と感じる人もいるかと思います。PETOKOTOで取り扱う規格外品や商品へのこだわりを教えてください。
まず私たちは“真のヒューマングレード”を目指して商品を開発しました。“ヒューマングレード”自体はペットフードのキーワードにもなっているのですが、例えばお肉でも人が食べない部位を使用している場合もあります。私たちは人が食べても問題ない品質と栄養素を目指すことが“真のヒューマングレード”だと考え、肉や野菜、すりごまやアマニオイル・フィッシュオイルをまんべんなく入れて作っています。
その上で特にこだわっているのは食材と製造方法です。
まずは食材。当社で扱っているものに関わらず、規格外品とは中身の品質はそのままに、色や形が基準に満たないものを指すので、決して人が食べられないものを与えているわけではありません。また他の食材も国産をメインに仕入れています。
次に製造。低温でスチーム調理し、急速冷凍しているので手作りのようにおいしく、サプリメントも添加しているので総合栄養食としてご利用いただけます。冷凍することで従来難しかった無添加での提供が可能となっています。そしてスチームでの低温調理は食材本来の旨みや香り、栄養素をキープできることがメリットです。
またペットフードの工場ではなく人間の冷凍食品を扱っている工場で製造しているため、品質管理も人間用と同じような規格で行っています。
―ペットフード専用の工場ではないというのは驚きです。工場を探すのがとても大変そうですが…
すごく大変でした(笑)元々冷凍のペットフードが存在していなかったので、従来のペットフード工場では作ることができなかったんですよね。そのため一般の冷凍食品工場を100社ほどあたったのですが、ペット用の食品を一般の冷凍食品工場で作ることの抵抗感や当時冷凍食品の需要が伸びていたことから、お断りされることがほとんどでした。
今製造をお願いしている工場は社長が犬を飼っていて、元気のない日が続いていたようなのですが、私たちの試作品を食べてもらったところとても元気になったと。人間と同じように新鮮なごはんが大事だと実感し、製造を受けてくれることになりました。
―商品面で他にこだわっていることがあれば教えてください。
出来る限り箱やパッケージは環境にやさしい資材やインキを使っていますが、今後も新しいチャレンジをしていきたいと思っています。
また保護犬猫の支援も社会課題として捉えているので、売上の0.1%を「OMUSUBI」に登録の保護団体に寄付し、ペトコトフーズの会員の皆さまには毎月の譲渡数などもお知らせしています。 皆さまの愛犬・愛猫がおいしいごはんを食べることで、保護犬猫の新しい未来につながる、そんな幸せな循環を作っていきたいと思っています。
いつものごはんにプラス!愛犬のおやつレシピ
今回の記事を読んで「新鮮なごはんをあげたい」「愛犬にごはんを作ってあげたい」と思った方もいるのではないでしょうか?
栄養バランスを考えて完全手作りをするというのはとてもハードルが高いので、まずはおやつから作ってみませんか?
スイカでひんやり豆乳プリン
<材料>(2皿分)
・スイカ 150g
・豆乳 80cc
・ヨーグルト 少々
・はちみつ 少々
・粉ゼラチン 5g
・黒ごま 適量
・ミントの葉 数枚
<作り方>
①スイカは、飾り用に小さな三角形に切ったものを4つ用意し、残りはミキサーでジュース状にする。
②鍋に①のスイカジュースと、豆乳、はちみつを入れて火にかけ、ふつふつと沸いてきたら火を止めて、粉ゼラチンを入れ混ぜる。
③粗熱が取れたら、グラスなどの容器に注いで、冷蔵庫で冷やし固める。この際に、表面の気泡をつまようじなどで潰しておくと、綺麗に仕上がる。
④固まったらヨーグルトをのせ、黒ゴマをスイカの種に見立ててつけた飾り用のスイカ、ミントの葉を飾ってできあがり。
お手軽モンブラン
<材料>
・さつまいも 150g
・ごはん 50g
・無調整豆乳 30g
<作り方>
①さつまいもを柔らかくする。
②装飾用のさつまいもをサイコロ状にカットし、それ以外は皮をむいて、網の上に乗せて木べらなどで濾す。
③濾したさつまいもに豆乳を少しずつ加えて混ぜる。豆乳を入れる量は、さつまいもの水分量に合わせて調節する。
④ごはんをお皿の上に乗せて、円錐形に整える。
⑤絞り袋を使ってごはんを覆うように、渦巻状や格子状にさつまいもクリームを絞る。最後にサイコロ状のさつまいもを乗せたら完成!
いかがでしたか?健康な身体を作るのは毎日の食事と言いますが、それは犬や猫も同じなんですね。今回の記事がフードロス問題、環境問題を考えるきかっけになればうれしいです。