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北海道の最果てで、畑で育てるお米づくりにチャレンジ!

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北海道の最果てで、畑で育てるお米づくりにチャレンジ!

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北海道の網走で農業を営む福田稔さん。気温が低いため米づくりはできないとされていた網走で、高品質な米づくりに成功したことで注目を集めています。しかもその栽培方法が特徴的。一般的に米は水を張った水田で苗を植えて栽培されますが、福田さんは畑に種をまいて米を育てる「陸稲(りくとう)」にチャレンジしています。まだ栽培技術が確立していない中、アサヒグループの“ビール由来のあるもの”も一役かっています。

左:アサヒバイオサイクル・アグリ事業部 上籔寛士/右:福田農場・当主・福田稔さん

網走の子どもたちに、地元で作ったお米を食べてもらいたい!

大正時代に創業した福田農場 。福田稔さんのひいおじいさんが開拓したそうです。現在の総面積は41.71ha。主に、澱粉用のジャガイモ、砂糖になるビート、小麦粉になる小麦を栽培しています。これらはいずれも、工場に出荷してから加工される原料用の作物。収穫して工場に出荷すると福田さんの役割は終わりとなります。そこからパンやうどんなどにさらに加工されるので、福田農場で作った小麦粉を食べてもらいたい、と思っても直接的には難しい。生産者である自分と消費者の距離が遠いと感じて、農業にモチベーションを持てなくなった時期があったそうです。これらがきっかけとなったお米づくりへの挑戦について伺いました。

ー なぜ、お米づくりを始めたのですか?

福田稔さん(以下:福田):少し農業に対して迷いがあった頃、農協青年部に入って活動するようになりました。すると、農家以外の人たちとの交流もあり、農家の役割を広い視点で考えられるようになったのです。大切な食糧を作っていることは理解している上で、やはり“誰かのためになっている”という実感を持ちたいという思いが強くなっていきました。

以前、青年部の部長が「一度、米を作ってみたいんだよね」と話していたことを思い出して、地元の人に福田農場で作った米を食べてもらって、おいしいと思ってもらうことをモチベーションに、米づくりを開始しました。

網走は冷涼な気候から米の栽培はできないとされていたので、昔から畑作が中心です。米づくりの設備が全くない中、一から米用の水田を作るのはハードルが高いと考えました。畑で米を育てる「陸稲」という栽培方法があることは何となく知っていたので、ネットで調べて、陸稲用の米の種を1kg購入してみました。2018年のことです。最初は誰にも言わずに、畑の隅っこに二列だけ、一人で種まきをして始めました。

ー お米はどのくらい収穫できたのですか?

福田:1年目は芽が出て稲穂まで成長したのですが、全く実が入っていませんでした。もちろんがっかりしましたが、自分としては長いスパンで取り組もうと思っていましたし、ダメだったら次の年に何かを変えてやればいいと思っていましたので、そんなにショックではなかったです。2年目は、お米の品種を変えてみましたが、また失敗。これは一筋縄ではいかないな…と思ってきました。

ビール酵母細胞壁由来の資材を使って、ようやく稲穂に実が入った

やはりなかなか難しいのですね。何が一番ネックだったのでしょうか?

福田:陸稲という栽培方法がまだ一般的ではないので、経験値が少なく、技術が確立されていないことだと思います。そういった点では、3年目の2020年は転機となりました。

1つは、ブランド米「ななつぼし」が陸稲に向いている品種らしいと聞いて「ななつぼし」の種に変えたこと、2つ目はビール酵母細胞壁由来の資材などを使ったことです。これによって、初めて稲穂に実が入って、米ができたんです。まさに“実るほど頭を垂れる稲穂かな”の状態になった畑を見て、とてもうれしかったです。コンバインもなく一人で手刈りして、知り合いの農家の方に精米してもらいました。家族や関係者で食べましたが、とてもおいしいお米でした。

陸稲栽培の稲穂

ー 3年目でお米ができたんですね。さらに翌年は規模を拡大したのですか?

福田:2021年はさらにターニングポイントとなりました。網走青年会議所から、地域コミュニティや農業の活性化を目指す取り組みとして「ビール酵母で育てる畑のお米チャレンジプロジェクト」を事業として採択してもらったのです。

市内の小学校で参加を募り、5月に親子で種まきを行いました。7月には草刈りやドローンでの肥料や資材散布を見学してもらうなど、親子で稲の成長を確認しました。コロナ禍でしたが、どうしても子どもたちに米づくりを一緒に体験してもらいたかったのです。そしていよいよ11月収穫の時。この年は天候が悪く、収穫できたお米はたったのお茶碗二杯分だけ。おなかいっぱい食べさせてあげたかったので、とても残念でした。でも一口ずつでしたが、“自分たちで作る以上の調味料はない”と実感してもらえたと思います。市販の「ななつぼし」と食べ比べてもらったりもしました。

2021年収穫イベントの様子

ー 毎年新しい試みをしようという姿勢が素晴らしいです。アサヒグループのビール酵母細胞壁由来の資材は役立っていますか?

福田:そう思います。2020年・21年の収穫量こそ少なかったものの着実に実が入るようになったので。

アサヒグループの資材を知ったのは2018年頃で、これまでも小麦やジャガイモに使っていました。作物が病気にかかりにくくなったというのが実感できて、米に使ってみようと思ったのです。

自分は作物を作るプロですが、肥料や資材のメカニズムや効果的な使い方などはまだまだ分からないことが多いので、アサヒバイオサイクルの上籔さんに技術サポートしてもらい、資材の使用量や、まくタイミングなど教えてもらったことが成功の一因になったと思っています。

環境負荷が低い「陸稲」。今後はお米づくりのスタンダードに?!

ー アサヒバイオサイクルでは、いつから福田農場をサポートしているのですか?

アサヒバイオサイクル 上藪寛士(以下:上籔):福田さんと初めてお会いしたのは2021年でした。その後、米づくりの夢を聞いて、「農業に明るい未来が見えそうだ!」と思いました。陸稲は水稲(水田で作る栽培方法)に比べて稲が吸収する水分量が少ないことから、通常成長が遅く茎も細いとされています。しかし、ビールの製造工程で発生する副産物「ビール酵母細胞壁」由来の資材は、稲の免疫力を高め根の成長を促進することから、根張りが向上し、発生した細かな根から植物の成長に必要な土壌中の栄養分を多く吸収することができるのです。これを使っていただいて米ができたと聞いて感激でした!

ビール酵母細胞壁由来の資材を散布する機械に投入している様子
左:資材を散布した畑で育った稲は根張りが良く稲も太い/右:資材を散布していない畑で育った稲

ー これからも福田さんを応援していくのですね?

上籔:もちろんです。21年の子どもたちとの試食会で、福田さんが感極まって涙していた姿が忘れられないですね。優しくて真面目な福田さんのお米づくりに対する情熱をこれからも全力で応援したいと思っています。

それに、もともと冷涼で栽培できる作物に限りがありましたが、今では温暖化で、北海道が注目されています。網走で米栽培ができるとなると、陸稲は生産者の皆さんの選択肢の一つになるかもしれません。福田さんと一緒に栽培技術を確立させていきたいです。

ー 陸稲は近年、環境負荷が低い栽培方法とも言われているんですよね?福田さんは当初から知っていたのでしょうか?

福田:いえ、当時は全く意識していませんでした。最近になって、温室効果ガスの一つであるメタンガスが、水田から多く発生するということが話題になっていると知ってビックリしました。水を減らすための工夫をしている方も多いようで、視察にいらっしゃる方も多いんです。思わぬ副産物でした。

ー どういうメカニズムで水田からメタンが発生するのですか?

上籔:水田の土の中には酸素が少ない環境でメタンを作る微生物が存在しています。水田に水を張ると水に覆われることで土壌中の酸素が減るので、微生物が活発に活動し、メタンが生成されるという仕組みです。農林水産業から排出される温室効果ガスの中でメタンは約47%を占めますが、そのメタンの最大の排出源が水田で、メタンの全排出量のうち約57%を占めると言われています。今は農林水産省と一緒に実証実験するプロジェクト も進んでいるんです。

福田:陸稲は水を全く張らないので、節水にもなりますし、さらに水稲に比べて作業工程も少ないので、農家の人出不足や高齢化問題にも貢献する栽培方法になるんじゃないかなと思っています。
「でも味がイマイチでは?」と思う方には、ぜひ私の作ったお米を食べてみてほしいです。網走の料理屋「菜ご海 」さんで、土鍋ごはんとおむすびとして出してもらっているのですが、ありがたいことに、とても好評なんですよ。

「菜ご海」で提供されている土鍋ごはん

ゴールは、子どもたちに給食で「福田米」を食べてもらうこと

ー 料理店にも卸しているということは、その後、順調に収穫できているのですね?

福田:はい。22年以降、順調に収穫できるようになり、栽培面積を徐々に広げています。24年は1.2haまで拡大して、精米にして約5t収穫できる見込みです。

ー お茶碗二杯から5tに!それはすごい進化ですね。

福田:自分でもこんなに早く成功するとは思っていなかったです。網走市の皆さんはじめ、上籔さんなど、応援してくれる人がいるからだなと思っています。当初3年間は一人で黙々とやっていましたが、今や多くの人が関わってくださることになり、成長することができました。本当に人に恵まれたと思うのですが、これまで、人生を大きく変化させる出会いがたくさんありました。好きな言葉に、哲学者・森信三さんの「人間は一生のうち逢うべき人には必ず逢える。しかも一瞬早過ぎず、一瞬遅すぎない時に」があるのですが、自分の思いや行動が出会いにつながると思いますのでこれからも頑張っていきたいと思っています。

※ 『森信三一日一語』寺田一清(致知出版社刊)より転載

ー 福田さんの今後の目標を教えてください。

福田:実は当初からの目標なのですが、網走の学校給食用にお米を採用してもらい、子どもたちに食べてもらうことです。安定的に供給するには、今の栽培面積1.2haから8haくらいまで拡大しなくてはいけない。そうするには一人だけでは難しく、一緒に米づくりをしてくれる仲間が必要だと思っています。

子どもたちに「給食のお米おいしかった!」と言ってもらえる日を目指して、さらにチャレンジしていきます!

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