11月24日は和食の日。老舗日本料理店なだ万のおいしい「だし」レシピ
この記事のキーワード
SHARE
11月24 日は「和食の日」。和食文化の保護・継承の大切さについて考える日として、実りの季節である秋の日の11月24日が“いい日本食”「和食の日」と制定されました※。
和食と言えば、素材本来の風味を引き立てる「だし」のうま味も魅力の一つですよね。和食好きな皆さんは、上品なだしの香りにほっとするという方も多いのではないでしょうか。今回は、和食にとってなくてはならない「だし」について、老舗日本料理店「なだ万」の調理長に教わりました。これを読んで、皆さんもだしを利かせた和食を楽しんでみませんか?
※一般社団法人和食文化国民会議「11月24日は「和食の日」」
プロフィール
鈴木 晴智
理事・第二調理部長/なだ万高輪プライム 調理長
単一等級調理技能士
愛知県出身。名古屋なだ万に入社し、香港アイランドなだ万チーフ、東京なだ万副調理長、なだ万汐留47調理長を経て、2016年なだ万高輪プライムオープンに伴い同店調理長就任、現在に至る。
INDEX
和食のだしとは?素材を生かす組み合わせが和食の神髄
素材の味を生かす和食において、だしはとても重要なものです。なだ万ではだしを取って味付けを担当するのは鍛錬を積んだ調理人です。素材の目利きや切り方などを覚え、最後に素材に火を通す煮方の仕事を任され、味付けを担当します。素材を知って先輩の味を覚えて、まかないなどで練習を重ねて、味を覚えていくのです。舌が鍛えられないと、何が足りないのか、それが良いだしなのかどうか判断がつきませんから。
だしは昆布とかつお節を合わせて使うのが一般的です。これは昆布のうま味成分であるグルタミン酸とかつお節のうま味成分であるイノシン酸が合わさることで、複合的な味わいが生まれ、それぞれ単独で使うよりもおいしく感じるためです。とは言え、だしには地域性もあり、京都では昆布を利かせることが多く、九州ではトビウオが原料のあごだしがよく使われますね。他にも野菜などさまざまな材料を使用してだしを取り、素材によってだしを使い分けることで、素材を生かした料理を作ることができます。このだしを使えばこの素材を生かせるなという組み合わせを常に考えているのです。
だしの種類とおすすめの料理。ポイントは仕上がりと温度
最終的な料理のイメージから考える
だしと料理の組み合わせのコツは、料理の仕上がりから考えること。例えば、そばつゆはそばの風味に負けないように、調味料を濃いめにしてまとめるので、かつお節やさば節でとったすっきりとした香りのだしを合わせます。お煮しめは野菜や鶏肉などいろいろな素材から十分だしが出るので、ベースはシンプルにかつおだしで。あとは、白いご飯にあわせるなら、だしより濃いめの味付けにする。お酒に合わせるならだしを利かせるなどで調整しますね。
かつおだし
おすすめの料理:吸い物、煮物、みそ汁、めんつゆ
和食において定番のだし。だしの上品な香りを楽しむ料理からしっかりと味付けする料理まで幅広く使えます。昆布とあわせて使うことが多いです。
かつおと昆布で取る一番だしは吸い物や椀物に欠かせないだしです。一番だしを取ったかつお節と昆布を使い、追いかつおをして取るのが二番だしで、こちらは煮物などに使います。
いりこだし
おすすめの料理:みそ汁、ラーメンつゆ
風味の強いいりこだしは、パンチを出したい料理に向いています。
ラーメンは中華麺自体には味がないので、パンチを出すためにいりこだしや肉系のうま味の強いだしを使います。肉系だしは臭みが強いので、臭み消しに香味野菜を入れることも多いです。
海老だし、蟹だし、貝だし、鶏だし
おすすめの料理:鍋つゆ、茶碗蒸し
うま味が強いこれらのだしは、だしのうま味をしっかり出したい料理に向いています。これらの素材が入った寄せ鍋の複合的なうま味の詰まっただしは最高ですよね。
昆布だし、干し椎茸だし、野菜だし、炒り米だし
おすすめの料理:精進料理、煮物
シンプルに素材そのものから出るだしを楽しむ料理に向いています。これらのだしは、ベジタリアンの方も楽しめますし、ビーガンの方には昆布だし以外の野菜だしを使っています。
調理の温度で考える
実はだしの使い方にはもう一つポイントがあるのです。ぐつぐつ沸騰させると香りが飛んでしまうので、吸い物などだしの香りを楽しみたいものは温度に気を付けてだしを使う。一方、煮物など素材からもだしが出て調味料でしっかり味付けするものは、温度はあまり気にせず使って大丈夫です。
本格的にかつお節と昆布でだしを取っても、だしパックや顆粒だしを使っても、吸い物と煮物とで温度でだしを使い分けるのがポイントです。
だし同士の合わせ方を考える
干し椎茸などの匂いの強い野菜だしは多用しないのがポイントです。セロリやニンニク、ショウガを臭み消しに使う場合もなんでも入れれば良いというわけではなく、全体のバランスを見て調整が必要です。
和食は季節を追いかける料理なので、日本の旬のもの同士であれば相性は良いです。これは野菜であっても魚介であっても同じです。
プロ直伝のおいしいだしの取り方はコレだ!
かつおと昆布の一番だし
<材料>
水 900㏄
昆布 8g
かつお節 35g(なだ万では、血合いのない抜節25g・血合いのある荒節10g)
<つくり方>
①昆布を水(軟水)に12時間漬ける。
②約20分かけて、ゆっくりと火にかける。温度が75℃くらいまで上がったら、昆布を取り出す。
※高温になると昆布のエグみが出るので注意
ここまでで昆布だしの完成
③できあがった昆布だしを火にかけ続けて1度沸騰したら火から外し、差し水(20㏄程度)をして温度を85℃くらいまで下げる。
④かつお節を一枚一枚入れるイメージで加え、浮いたかつお節を沈める。
⑤白い泡は雑味なのでスプーンなどで取り除き、5分間寝かせる。
⑥ザルとキッチンペーパーの二層で静かにこす。
※ザルに残ったかつお節は絞らないこと!せっかくの一番だしが濁ってしまい、かつお節の生臭みも出てしまうので注意
<ポイント>
ある程度まとまった量でだしを取ることがおいしさの秘訣です。不思議なことに少量で取るよりも鍋の中でかつお節が泳ぐくらいの900㏄くらいが一番香りとうま味が引き出せます。冷蔵庫に入れて5日間程度はもつので、まとめて作りましょう。
海老だし、蟹だし
海老の頭や蟹の殻などを一度焼いて香ばしさを出した後、水と酒、香味野菜とともに煮出してだしを取ります。香味野菜は長ネギの緑色の部分などをよく使っています。
魚のあらなどのだし
水によくさらし、血合いやうろこをきれいにします。血合いは臭みのもとなので、大きな中骨の中の血も金串で刺して抜いています。
塩を振って、熱湯をかけて霜降りにした後に、水と酒、昆布でだしを取ります。
干し椎茸などの乾物だし
前日から水に漬けておき、それを火にかけてだしを取ります。
野菜だし
サトイモの皮、ダイコンの皮、ニンジンなど、すぐに火が入りやすいものは10~15分程度で水から煮出します。長く煮出すとエグみが出るので注意が必要です。
トウモロコシの芯は20分程度で煮出します。トウモロコシご飯を作るときには、昆布とトウモロコシの芯を米と一緒に炊飯器に入れて炊き、炊き上がったらトウモロコシの実をご飯に混ぜるのがおすすめです。
炒り米だし
生米を乾煎りした後、水からゆっくりと加熱してだしを取ります。煎らない方法もありますが、香ばしさが出るので煎る方がおすすめです。長時間煮て重湯風のだしにすることもあります。
だしが引き立つレシピと言えば、すまし汁
吸い物の中でも、すまし汁は汁を主役として楽しむ料理です。今回はなだ万自慢の「海老真丈のすまし仕立て」を紹介します。もちろんご家庭でお好みの具材を用意してアレンジするのもおすすめです。
<作り方>
①具材の下ごしらえをする。
海老真丈*後述
薄切りにしたニンジン、鶴菜をゆでる。
ゆずの皮を千切りにする。
③かつおだしに塩をお好みで少々加え、塩分濃度0.5%程度に味を整える。
※加熱するとどうしても香りが飛ぶので、火にかけないで味付ける
④だしを温め直し、最後に薄口しょうゆを少々入れて香りを足す。
⑤あらかじめお椀に具をセットし、だしを静かに注ぐ。
<ポイント>
具と汁の塩分濃度を同じにすること。だしで具を煮ないので、口に入れたときに一体感が出るように、同じ味の濃さになるように具に味付けすることが大切です。
海老真丈のつくり方
<材料>
海老(ムキ) 200g
魚すり身 200g
昆布だし 120㏄、500㏄
はんぺん 50g
<つくり方>
①海老の殻をむき、粗みじん切りにする。
②はんぺんも粗みじん切りにする。
③当たり鉢に①の海老の半量と魚のすり身を入れ、昆布だしを少しずつ入れのばしていく。
④①の残りの海老と②のはんぺんを加え、ざっくりと合わせる。
⑤鍋に昆布だし500㏄を入れ、80℃に温め、④の海老真丈を30gの丸に取り、昆布湯にて火を入れる。
いかがでしたか?なだ万直伝のだしの取り方と使い方をぜひご家庭でも試してみてください!