料理のキホンさしすせそ③ キッコーマンに聞く!しょうゆの世界
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調味料を知ると食はもっと楽しくなる!料理のキホン「さ・し・す・せ・そ(砂糖、塩、酢、しょうゆ、みそ)」を全5回にわたり、深堀りします。第3弾である今回は、世界に誇る日本の発酵調味料「しょうゆ」について、キッコーマンでしょうゆの商品開発を手掛ける伊藤夏大さんにお話を聞きました。
INDEX
しょうゆのキホン。つくり方と種類、魅力とは?
―まず、しょうゆはどのようにつくられるのか教えてください。
主な原料は大豆、小麦、食塩(塩)で、これに微生物の働きによる発酵が加わることで、しょうゆになります。つくり方のポイントは4点。
①蒸した大豆と炒って細かく砕いた小麦に麹菌を加えて、「しょうゆ麹」をつくります。
②「しょうゆ麹」に食塩水を加えたもの(=もろみ)を発酵・熟成させます。
③発酵・熟成が終わった「もろみ」を布で包んでしょうゆを搾り出した後、美しく澄んだ状態にするために休ませて、表面の油や底に沈んだおりを分離させます。
④しょうゆに熱を加える(=火入れ)ことで、色・味・香りを整え、微生物の殺菌や酵素の動きを止めます。「火入れ」せずに、微生物を精密な膜により除去したものが「生(なま)しょうゆ」です。
―大豆や小麦を発酵させてつくられているのですね。さまざまなしょうゆがあるのですが、どのような違いがあるのでしょうか。
しょうゆの日本農林規格(JAS)ではいくつか分け方があるのですが、皆さんにも聞きなじみのある「こいくち」や「うすくち」、「たまり」などは原料と製法の違いでの分類になります。他に「さいしこみ」「しろ」があります。
―ここまででもしょうゆの奥深さを感じるのですが、伊藤さんの考えるしょうゆの魅力はなんですか?
食材のおいしさを引き立ててくれるのが大きな魅力の一つだと思います。特に生しょうゆのように穏やかなしょうゆは、そういった使い方がおすすめです。面白い使い方では、バニラアイスにしょうゆをたらすのも良いですよ。甘みが引き立ってコクも出ます。かけるしょうゆの種類によって味わいも変わるので、いろいろなしょうゆで違いを楽しんでみるのもおすすめです。
進化する「減塩」しょうゆ、流行りの「だし」しょうゆ
―ハラール対応やフリーズドライタイプなど、しょうゆも進化しているなと感じます。伊藤さんにとって進化するしょうゆと言えば、何でしょうか?
減塩しょうゆかなと思います。キッコーマンでは1965年に発売したのが始まりで、疾患などにより塩分摂取量が制限されている方のために開発しました。今では一般のお客さまにも使っていただき、定番の一つになっていますよね。
減塩しょうゆのつくり方は、しょうゆを水で薄める希釈法と、しょうゆから塩分を取り除く脱塩法の二つ。一般的に脱塩法の方が設備やコストはかかるのですが、しょうゆの香りや味わいが残りやすいので、脱塩法を採用しています。塩分が少ないしょうゆには物足りなさを感じられる方も多いのですが、おいしさと減塩を兼ね備えるために50年以上開発を続けてきました。
おすすめの「いつでも新鮮 味わいリッチ減塩しょうゆ」は、味の厚みやコクを出すためにみりんを使っているんです。しょうゆと同じく日本古来の調味料で、キッコーマンも長年みりんをつくっているので、培った技術をかけ合わせた商品ですね。 容器も進化していて、しょうゆが空気に触れない二重構造の「密封ボトル」は、ボトルを押すとしょうゆが出て戻すと止まる「押し出し式」で、一滴から注ぐ量を調節できるので、減塩にもぴったりです。
―今、流行りのしょうゆについても教えてください。
流行りのしょうゆと言えば、だししょうゆです。北海道の昆布しょうゆや広島のかきしょうゆなど、エリアによっては昔から親しまれていましたが、他のエリアでは新しいと感じる方も多く、特に若い方に人気です。ここ10年くらいでしょうゆにうま味を求める方が増えていて、甘味もあるのでお子さんにも人気なんですよ。
開発で印象に残っているのは、だししょうゆへの皆さんの愛です。かきしょうゆについて広島でお話を伺った際には、「絶対にかきしょうゆでなければダメ。他のしょうゆは使えない」と言うロイヤルユーザーの方の多さと愛の深さに驚きました。その後、開発した商品をたまごかけご飯に使った方からいただいた「たまごかけご飯の大革命だ!」というコメントは忘れられません。
だししょうゆは、たまごかけご飯やおひたしなどにかける使い方も、煮物など調理に使うのもどちらもおすすめです。
伊藤さんおすすめ!秋にぴったりな「生しょうゆ」を使ったレシピ
―皆さんに取り入れてほしいおすすめのしょうゆと取り入れ方を教えてください。
今回は生しょうゆを使ったレシピを二つ紹介しますね。生しょうゆは、火入れをしないので華やかな香りとおだやかな味わい、鮮やかで明るい色合いが特徴です。
一つ目のレシピは「きのこのジュワッと焼き」。
シンプルにきのこを焼いて、仕上げにフライパンの上で生しょうゆをさっと回しかけるのですが、生しょうゆは調理のときに初めて火が入るので香り立ちが良いんです。色も明るいので料理の仕上がりもきれいですよ。他の食材でももちろんOK。旬の食材のうま味を引き出してくれるレシピです。
二つ目は、「無敵漬け」です。
サーモンやまぐろといった食材を生しょうゆに少し漬け込むだけ。漬けは黒っぽくなりがちですが、生しょうゆだときれいな色に仕上がります。火入れをしていない生しょうゆには酵素が残っているので、表面の繊維がくずされてやわらかくなりますし、中までよく味がしみ込むんです。
―たくさん教えていただき、ありがとうございました。最後に、伊藤さんが「しょうゆ」を通して皆さんに伝えたいことはありますか。
しょうゆは当たり前の存在すぎて、違いを考えたことはないかもしれませんが、品質にも違いがあったり、メニューによってそれぞれ向いているしょうゆがあったりと、奥深いものです。しょうゆを使い分けることで、お料理がさらに楽しいものになると嬉しいです。
皆さんもいろいろなしょうゆを試して、ぜひお気に入りの1本を見つけてみませんか?
料理のキホン「さ・し・す・せ・そ」次回は「砂糖」を紹介します。お楽しみに!